
現役時代、高い外野守備能力を誇ったイチロー[写真=BBM]
真剣にプレーする姿からイチローらしさを感じられた。9月23日、東京ドームで行われた「SATO presents 高校野球女子選抜vsイチロー選抜KOBE CHIBEN」だ。今年で4度目となった高校野球女子との一戦。イチローは10月に51歳となるが、年齢を感じさせないハツラツとしたプレーを披露した。先発マウンドに上がり、初回に4連打を浴びるなど3点を失ったが、2回以降は立ち直る。10三振を奪って完投勝利と、まさに“熱投”を見せた。打っても2本の二塁打を含む4安打をマーク。真剣な表情を崩さず、最後までプレーした。
唯一、喜びの表情を見せたのは初出場となった
松井秀喜が本塁打を放った際だ。8回二死一、二塁で右翼席に飛び込んだ一撃を見届けると、ベンチ前で松井とハグして、相好を崩した。
エキシビジョンマッチなら、元プロ野球選手と言えど、衰えた姿を披露して興ざめすることもあるが、イチローはそんなことない。常日ごろから最大限に努力して、動ける状態をつくっている。それはプレーを見れば分かる。高校野球女子にとっても、大きなモチベーションとなるだろう。野球界全体のことを考えて、こうした活動を続けるイチローには頭が下がる思いだ。本当に「イチローよ、ありがとう」と賛辞を贈りたくなってしまう。
私の三塁コーチ人生の中で、
オリックス時代のイチローが最高の外野手だった。
西武でともに戦った
秋山幸二も優れた守備力を誇っていたが、返球が高いという欠点があった。肩の強さだけなら
羽生田忠克(西武)もいた。ただ、羽生田の場合は10球投げたら、半分以上は返球がそれた。しかし、イチローは強肩に加えてコントロールも抜群。80〜90%の確率でストライク返球を見せていた。
三塁コーチとして「ここはホームにかえれるか、どうか」と思った場合、五分五分なら「ゴー」だ。しかし、イチローに限ってはプレッシャーがある。肩の強さ、コントロール、さらに前のゴロに対するチャージの鋭さも一級品だったから、ほかの外野手なら右腕を回す場面でも、イチローでは躊躇することが多かった。
ただ、イチローがライトを守っている際、二走が三塁ベースを踏んだあと、三本間の真ん中くらいまでは時間的に引っ張ることができる。その際、イチローの動きをしっかり見ることが重要だ。あるとき、ランナー二塁で右中間寄りに打球が飛んだ。イチローはツーバウンドで処理。私は二走を三塁で止めようと思った。ところが、三塁手前まで来たとき、イチローがその打球に対し少し差し込まれた。もちろん、イチローはその様子を見せまいとしたが、私は「行ける」と確信して右腕を回した。
結果は間一髪、セーフ。このときばかりは「よし! イチローに勝った」と思った。50歳のイチローのプレーを見て、そういった懐かしい日々も思い出された。
PROFILE 伊原春樹/いはら・はるき●1949年1月18日生まれ。
広島県出身。北川工高(現・府中東高)から芝浦工大を経て、71年ドラフト2位で西鉄入団。76年
巨人に移籍し、78年古巣ライオンズに復帰して80年限りで現役引退。通算成績は450試合出場、打率.241、12本塁打、58打点。81〜99年に西武で守備走塁コーチを務め、西武黄金時代の名三塁コーチとして高い評価を受ける。2000年
阪神コーチ、01年西武コーチから02〜03年西武監督、04年オリックス監督を歴任。07〜10年巨人ヘッドコーチを務め、14年は西武監督。現在は野球解説者として活躍している。