すい星のごとく現れレギュラーをつかんだ。それだけではなく、いきなり盗塁王のタイトルまで獲得してみせた。ドラフト6位という下位指名ながら、持ち味の思い切りのいい打撃とともに、コーチの助言でプロに入ってから急成長を見せた「走塁」で一気にブレークした。 取材・構成=椎屋博幸 写真=BBM 
今季は企画数を増やし50盗塁で2年連続盗塁王を目指す
筒井コーチのあと押し
ちょうど1年前、新人合同自主トレのときには、中野本人でさえ1年目から盗塁王になるとは思っていなかった。足には自信はあるものの、盗塁の意識はそこまで高くなかったのだ。しかし、筒井壮外野守備走塁兼分析コーチのある助言により、気持ちに変化が起こった。 ──昨年新人シーズンの目標の中に「盗塁王」は入っていましたか。
中野 いや、まったく頭の中にはなかったです。シーズン序盤は本当に狙っていこうという意識もまったくなかったです。
──社会人までは、そこまで盗塁は意識していなかったとも聞いていますが。
中野 そのとおりで、社会人のときは盗塁に関して意識はしていなかったですね。矢野(
矢野燿大)監督の「超積極的野球」という方針が、次塁を狙う意識を高めてくれたのはあります。それと筒井コーチがあと押しをしてくれたのが大きいです。そこで思い切ってスタートを切れるようになってから、盗塁が成功するようになりました。
──筒井コーチのあと押しというのは、どういうアドバイスですか。
中野 足が速いということではなく「帰塁」が速いというふうに言ってもらったんです。そこで自分に「オレは帰塁がうまいんだ」と思わせることができました。そこで、一塁へ帰塁しなければという不安がなくなり、あとはスタートを切るだけ、という状態になり、スタートがうまく切れるようになりました。
──「帰塁」がキーワードで、その意識だけで……すごいですね。
中野 自分は帰塁がうまいんだから、と思うことで、それ以外のことは意識をしなくてよくなり、スタートだけに集中できたんだと思います。スタートすることに勇気が出たという感じです。
──帰塁がうまいということは、何がうまいのでしょうか。
中野 戻る意識が強いのではなく、反応がいいということだと思います。いつでも反応して帰塁ができるので、そこで気持ち的に割り切ることができるようになったのだと思います。それまでは「けん制アウトになったらどうしよう」という思いがあったので、その「帰塁がうまい」と言われることによって逆に帰塁を意識しなくなっていき、スタートのほうに意識が向いていったという流れです。
──帰塁と盗塁成功の因果関係は面白いですね。
中野 帰塁の意識がなくなることで、スタートに少しの差が出て、今までよりも少し早くスタートが切れるようになっていき、成功率が高くなったのかなと思います。
──それまでどれくらいの感じで「帰塁」を意識していたのですか。
中野 最初は・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン