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【内野守備編】
解説=水上善雄


以前、巨人亀井善行選手は外野からファーストに回ったことで守備への負担が増えて、打撃に影響することがあったと話していました。一方、阿部慎之助捕手はたまにファーストを守ると、守備の負担が軽くなって、打撃に集中できると言います。同じ守備位置の変更でも、このように差があるのはなぜですか。(神奈川県・匿名希望・20歳)


 前回(11月18日号)の続きです。前回は外野手と内野手の守備の特性の違いについて説明しました。

 外野手がゴロのヒットの打球を処理するときに、それをポロッとお手玉したとします。それでも、ボールを大きく逸らしたりしない限りは、打者走者は次の塁に進むことはできません。ところが内野手の場合は、わずかでもファンブルしてしまうと、アウトにできず、塁を一つ許してしまいます。投手にしてみると、打ち取ってアウトになるはずの打者が生きてしまう。これは大きな精神的ダメージを受けます。野手もまた、ミスをした自分に対して罪悪感を負うでしょう。「せっかくピッチャーが打ち取ったのに、自分のせいで生かしてしまった」と。そう考えたら、一球に対する集中度は、外野よりも高いものが要求されます。

 質問に出てくる亀井選手の場合、外野手としては、もともと守備の能力が高い選手です。おそらく、打席にも高い集中力を持って臨めていたと思います。それほどの守備に対する意識で済んでいたはずです。それがファーストを守ることで、この質問にあるように、「負担が増えて打撃に影響する」ということが、実際にあったかもしれません。

 ただし、一概に守備位置の問題だけとは言い切れない部分もあります。打順であったり、起用される場所(場面)であったり。そもそも常に試合に出場していたわけではないということもあります。そのようないくつかの要因が重なって、本来のバッティングができなくなってしまっていた可能性もあります。

 外野にいたときはほぼレギュラーとして試合に出場していたのが、ファーストに回り、準レギュラー的な立場になってしまったのです。打撃で勝負している選手というのは、試合に出たり出なかったりという状況になると、調子を維持することが難しくなります。そういう意味での「負担」が掛かっていたのかもしれません。それを、守備から来る負担なのだと本人が感じたり、周りが考えてしまったりしたのでしょう。

PROFILE
みずかみ・よしお●1957年8月9日生まれ。神奈川県出身。76年にドラフト3位でロッテに入団。79年から正遊撃手となり87年にベストナインを獲得。90年に広島、91年にダイエーに移籍し翌年引退。2008年から2年、日本ハム二軍監督、今オフよりソフトバンク三軍統括コーチ。
【走塁編】
解説=笘篠賢治


プロ野球で、毎年パ・リーグの盗塁王は50盗塁以上の争いになるのに比べて、セ・リーグは赤星憲広選手の引退以降、盗塁の数が減っています。セ・リーグにも足の速い選手がいると思いますが、なぜこんなに差がついてしまっているのでしょうか。リーグによって戦術の違いなどがあるのでしょうか。(徳島県・匿名希望・17歳)


 前回まで4週にわたって説明してきました(11月4日号、10月7日号、9月9日号、8月12日号)。この質問をまとめましょう。

 質問の方は「50」という数字をピックアップしています。私は現役時代、ただ足の速さに任せてスタートを切って、それでも30以上の盗塁を成功させていましたから、そのころから配球を読んだり、投手のクセを見抜くような努力をもっとしていたら、シーズン50盗塁というのは全然難しい数字ではなかったという気がしています。

 同じように、今のセ・リーグの選手も、環境さえ整えられたら、50は不可能ではない数字です。

 ただ、実際に50盗塁するためには、少なくても10前後の失敗があるはずです。レギュラークラスの選手で、出塁したらほとんど盗塁を仕掛けるくらいの感覚でしょう。言い変えれば、出塁したら常に狙わなくてはいけないし、三塁盗塁もできた方がいい。三塁盗塁は、すでにスコアリングポジションにいるにもかかわらず次の塁を狙うわけですから、100パーセント成功する状況でやらなければチームに迷惑がかかります。でも、走者が二塁よりも三塁にいた方が守備側にプレッシャーがかかりますし、二死でなければスクイズや犠牲フライという得点パターンも生まれます。

 セ・リーグは今年、広島の丸佳浩選手が台頭し、盗塁王を獲得しましたが、ほかにもスピードのある選手がたくさんいます。巨人の坂本勇人選手、長野久義選手ももっと走れるはずですし、横浜の荒波翔選手も私は非常に期待している選手です。プロ野球はショービジネス的な要素も含んでいます。スピードがある選手はファンもそれを期待しているわけですから、どんどん走って、その期待に応えてほしいものです。

 現役時代の赤星憲広選手や、巨人の松本哲也選手もそうですが、決して大きくはない体でプロ野球選手になって、派手なホームランは打てなかったとしても、スピードという武器を磨けばスターになれる。子どもたちにも希望を与えられるはずです。盗塁にはそういう要素もあるのです。

PROFILE
みずかみ・よしお●1957年8月9日生まれ。神奈川県出身。76年にドラフト3位でロッテに入団。79年から正遊撃手となり87年にベストナインを獲得。90年に広島、91年にダイエーに移籍し翌年引退。2008年から2年、日本ハム二軍監督、今オフよりソフトバンク三軍統括コーチ。

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