九州共立大4年時にプロ志望届を提出したが指名漏れ。社会人野球の名門・東芝で3年プレーしたが、プロから声はかからなかった。一念発起して独立リーグへ進み1年間、必死に白球を追い続けた。 取材・文・写真=高田博史(スポーツライター) 
9月18日、対愛媛戦[坊っちゃん]。左打席からシュアな打撃を見せ、守備力にも安定感がある
望月涼太が挑み続けてきた1年間が、もうすぐ終わろうとしている。残す公式戦は、数えるほどとなった。
6月前半、盗塁(2位)を除いて打率、安打、本塁打、打点、得点、出塁率の6部門で1位に立っていた。
ところが、この終盤に来て、タイトルに関連する4部門(打率、打点、本塁打、盗塁)でトップの座を奪われている。
「タイトル、1つもないなって……」
少し寂しそうな表情を見せた。
2017年秋、テレビが生中継したドラフト会議での指名漏れは、“残酷な悲劇”として世間に報じられた。その後、社会人野球の名門・東芝へと進む。
際立った攻守走の存在感
入社3年目となった昨秋、25歳になったが、NPBへ行きたいという思いをあきらめ切れない。周りからの反対を押し切り、退社を決断。一度きりの人生に後悔したくない。それが、最大の理由だった。
挑戦の場として選んだのは、プロ野球独立リーグ、四国アイランドリーグplusである。21年が明け、香川オリーブガイナーズへの入団が決まる。
新チームがスタートし、練習試合(3月3日、丸亀市)で三菱自動車倉敷オーシャンズと対戦している。6対2で勝利しただけでなく、早くもその実力を披露した。昨年の都市対抗で若獅子賞に輝いた、ドラフト上位候補の154キロ右腕・
廣畑敦也から右翼線へ二塁打を放つなど、3安打2打点の活躍を見せている。
香川・近藤智勝監督も、並の選手ではないことを認めていた。
「非常にハツラツとしていて、力強いというか。いまの独立リーグの中でしたら、頭1つ2つ抜けている選手だと思います」
前期リーグ戦が開幕し、香川が快進撃を続ける中、望月の存在感は際立つ。3.4月度月間新人賞を受賞(その後、7月度月間新人賞も受賞)。前期優勝の立役者の1人となった。
前期優勝を決めた直後、6月に行った取材で、こう発言している。
「やっぱり(スカウトが)見に来たときに、ヒットより『おっ!』と思ってもらわないといけないと思っています」
ただ安打を放っただけでは魅力に欠ける。強い打球で右中間、左中間を破る長打を打つ。そして、速球派投手のボールこそ、しっかりと引っ張る。そんなテーマを自らに課していた。
だが、視察に訪れたスカウトからの視線は、あまりに冷ややかだった。
「望月? いい選手だとは思います」
実力は認める。二軍ならば十分、レギュラーも張れるだろう。しかし、来年27歳になる選手を指名することに躊躇(ちゅうちょ)していた。望月を獲るために、どのように上司を説得すれば良いのか? 球団の現状、中・長期を見据えたチーム強化を考慮すれば、26歳の新人選手を獲得することに、どれだけのメリットがあるのか? それが、現実だった。
8月に入り、徐々に成績が下降し始める。大振りが目立ち、空振りして地面にヒザを着く場面も増え始めた。
対
ソフトバンク3回戦(9月1日、高松市)で2三振を喫し、交代を命じられている。ケガをしたわけではなかった。
翌日、雨で試合が中止となったレクザムスタジアムのコンコースで、外部スタッフである吉田一郎コーチからマンツーマンでの指導を受けている。
「コンパクトに。投手の足元を狙って打ち返せ!」
夏の疲れが出始めていた。上半身と下半身のバランスが、バラバラになっている。その自覚は、本人にもあった。
「(強く)振るんですけど。その振りが、ただ大きいだけになっている感じで……」
先発から外されて2試合目の対高知後期8回戦(9月5日、高知市)、1点を追う6回表二死一塁の場面で、代打として打席に立った。高知・
藤井皓哉(元
広島)のストレートをはじき返し、打球が中堅手の頭上を越える。同点打となった適時二塁打は、復活の証しとなった。
総合優勝で有終の美
9月18日、松山。久しぶりに会う望月の表情からは、悲壮感が消えていた。
「状態は良くなっていると思います。気持ち的に、全然違うので」
思えば、あの不調は技術面が問題だったのではなく、精神面に原因があった。周りにNPBからの調査書が届き始めている。だが、自分には何の音沙汰もない。その焦りが、リズムを狂わせていた。
「結局、このまま終わるのかなあって。そういう気持ちがあったので……」
しかし、それももう吹っ切れた。今やらなくてはいけないことと、調査書が届く届かないは、まったく別の話だ。
最終成績は、打率.330(2位)、40打点(2位タイ)、4本塁打(3位タイ)、19盗塁(4位)と、無冠に終わっている。
「最後、やり切るしかないかな、と思って。もう、チャンピオンシップを全力で」
9月25日、香川は『トリドール杯チャンピオンシップ』で高知を下し、年間総合優勝に輝く。望月も四番・遊撃手として2試合で2安打、第2戦では左前に適時打を放っている。2つ掲げていた目標のうち、まずは1つをかなえた。
あっという間の1年間だった。きっと、充実していた毎日がそう思わせたのだろう。もし挑戦していなかったなら、大きな悔いが残っていたはずだ。
「これだけ野球ができたので。逆に後悔はしないと思うんです」
四国に来て、挑戦して本当に良かったと、心の底から思えるように。後はただ、運命が決まる瞬間を待つ――。

9月25日、年間総合優勝決定後には、歓喜の輪ができた[左から2人目が望月]
PROFILE もちづき・りょうた●1995年6月25日生まれ。滋賀県出身。175cm 78kg。右投左打。東大阪大柏原高では1年夏に甲子園出場。九州共立大ではベストナイン2度受賞で、福岡六大学リーグ戦で通算110安打を放った。東芝では3年プレー。21年は四国IL/香川でプレーした。