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市川祐(日大・投手) 東都現役最多15勝の実戦派右腕「毎日の積み重ねで、ここまで来られた」

 

高校3年時、ドラフト指名漏れの無念を味わった。日大では2学年上のドラフト候補たちと対等に投げ合い、戦国・東都で大きく成長した。ドラフト1位を狙う右腕だ。
取材・文=小川誠志 写真=菅原淳

活動拠点の千葉県習志野市内のグラウンドで撮影。充実の表情を見せる


恩師の言葉で前向きに


 2021年10月11日、関東一高3年生だった市川祐は、報道陣の前で緊張しながらドラフト指名を待った。1年夏に甲子園のマウンドを経験。2年秋の東京大会ブロック予選1回戦(対新宿高)ではノーヒットノーランを達成している。3年夏、東京ドームで行われた東東京大会準決勝(対修徳高)では最速152キロをマーク。二松学舎大付高との決勝で敗れ再び甲子園のマウンドを踏むことはできなかったが、高校最後の夏の投球に手応えをつかんでプロ志望届を提出した。

 小園健太(DeNA)、風間球打(ソフトバンク)、森木大智(阪神)ら自分と同じ高校生の右腕投手が次々に名前を呼ばれていく。夏の東東京大会決勝で投げ合った二松学舎大付高の左腕・秋山正雲ロッテから4位指名された。しかし「市川祐」の名前は呼ばれることなく、全12球団の指名が終わる。悔しさは、今も強く心に残っているという。

「3年の夏に自分としてはいいピッチングができたと思っていて自信もあったので、悔しさはありました。それでも(関東一高の)米澤貴光監督から『これで野球人生が決まったわけじゃない。大学で頑張って、またプロを目指しなさい』という言葉をかけてもらって、もう一度頑張ろうという気持ちになりました」

 恩師の言葉で前向きな気持ちを取り戻すことができた。「4年後、もう一度プロへ挑戦したい。そのためにレベルの高い強い大学でやりたい」と考え、東都リーグの名門・日大へ進学。3年間で、東都一部リーグで現役最多の15勝という実績を積み上げてきた。上位候補としてドラフトイヤーに臨む。

甲子園準Vの弟が入学


 140キロ台後半をマークする速球とスプリット、ツーシームなどの変化球をコントロールよく投げ込み打者を打ち取るのが、市川のピッチングスタイルだ。コントロールにはもともと自信があったが、自分の武器をさらに磨くため、ブルペンでの投球練習ではなるべく打者に立ってもらっているという。「実戦の意識をより強く意識するためと、打者が立っているとどこでリリースすればどこに行くというのが目安として分かりやすいんです」とその理由を説明する。

 大学1年時は肩を痛めていたことから、体幹トレーニングなどに力を入れた。秋のリーグ戦終了後から投球を再開。2年春、開幕週の国学院大2回戦でリーグ戦初登板初先発すると、7回5安打3失点の好投で初勝利。そのシーズンは4勝を挙げ、防御率0.94(リーグ3位)の好成績を残した。2年秋にも4勝を挙げ、敢闘賞を受賞。3年春には4勝を挙げ防御率1.56(同5位)の成績で最優秀投手、ベストナインを獲得する。

 3年夏は侍ジャパン大学日本代表に選ばれ、プラハベースボールウィーク(チェコ)、ハーレムベースボールウィーク(オランダ)と2つの国際大会に出場。大学日本代表は両大会とも全勝優勝を果たしたが、市川は3試合にリリーフで登板し、計6回を無失点と好投した。

3年時は侍ジャパン大学代表でプレー。昨年12月には候補強化合宿[愛媛・松山]に参加した[写真=山田次郎]


 今春の目標は「リーグ戦5〜6勝、負けなし」に設定している。日大は京田陽太(DeNA)、上川畑大悟(日本ハム)らを擁した2016年秋を最後に優勝から遠ざかっている。「エースである自分が5〜6勝すればチームの優勝がぐっと近づいてくるはず」と言葉に力を込める。

 日大を率いる片岡昭吾監督は「冬の(進路についての)面談で、市川は『ドラフト1位を目指す』と断言しました。投手陣の中で投げ込みの数も、ピッチング以外の練習量も一番多いのは市川。今年にかける思いは強いんだと思います。この冬でまた身体も大きくなりました。市川がやってくれないと困ります」とエースに期待を寄せる。

 関東一高の遊撃手として昨夏の甲子園で準優勝し、今春、日大に入学した遊撃手・市川歩(1年・関東一高)は市川の3歳年下の弟だ。兄弟同じチームでプレーするのは学童野球チーム以来になる。「弟と一緒にやれるのはうれしいですし、不思議な感じもします」と市川にとって大きな刺激になっている。片岡監督も「歩は野球勘がすごくよい。守備ならばもうベンチに入れたいレベル。兄が投げているときに守らせてみたいですね」と、兄弟での出場をほのめかす。

逸材たちと切磋琢磨


 大学2年時に国学院大・武内夏暉(西武)、青学大・常廣羽也斗(広島)、下村海翔(阪神)、中大・西舘勇陽(巨人)、亜大・草加勝(中日)、東洋大・細野晴希(日本ハム)と東都一部各校にドラフト1位でプロ入りした好投手がいた。そのなかで市川は、春秋計8勝を挙げている。「毎試合、相手投手がドラフト1位だったので、1点取られることが負けにつながってしまう。プレッシャーの中で投げ合うことで鍛えられました。あの経験は自分にとって大きなプラスになっている」と市川は胸を張る。

 高校時代の最速は152キロだが、大学での最速は148キロだ。この冬は球速アップ、球威アップを目指して走り込みとウエート・トレーニングに力を入れてきた。

「真っすぐのスピードと強さが自分には足りないと思うんです。この冬はチーム全体でかなり走り込み、さらに個人的にはウエート・トレーニングに今まで以上に力を入れました」

 オープン戦のピッチングで、冬場の取り組みの成果を実感しているという。この春は球威、スピードが増し、もう1段階スケールアップした姿を披露したい。

 大事にしている言葉は『積み重ね』。野球を始めた小学校4年生から毎日練習を積み重ね、大学でも実績を積み重ねてきた。「自分自身、小学校時代はそんなにうまい選手ではなかったけれど、毎日の積み重ねで、ここまで来られたと思う」と自負する。ドラフト上位指名、そしてプロでの活躍を目指し、これからも努力を積み重ねていくつもりだ。

PROFILE
いちかわ・たすく●2003年8月23日生まれ。東京都出身。185cm85kg。右投右打。四谷小4年時に四谷フェニックスで野球を始める。4、5年時は三塁手、一塁手。6年時から投手。四谷中時代は新宿シニアに所属し、全国大会2度出場。3年時にはシニア日本代表に選ばれ世界大会優勝に貢献。関東一高では1年夏からベンチ入りし、同年夏の甲子園で8強進出。3年夏は東東京大会準優勝。日大では2年春にリーグ戦初勝利。同秋に敢闘賞、3年春には最優秀投手、ベストナインを受賞。3年夏には侍ジャパン大学日本代表入りし、国際2大会の優勝に貢献。東都一部通算32試合、15勝11敗、防御率2.10。最速152キロ。変化球の球種はカットボール、ツーシーム、スプリット、カーブ、チェンジアップ。
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