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北海道ガス・北嶋洸太(投手) インパクト残した13球「2年目はチームを勝たせられる、全国で勝てるようにやっていきたい」

 

京セラドーム大阪で強烈な印象を与えた。社会人1年目で初の全国舞台。自己最速を2キロ更新し、大卒入社2年目で迎えるドラフトイヤーにつなげた。
取材・文=小中翔太 写真=松村真行

昨年10月29日、JFE西日本との社会人日本選手権1回戦で8回裏、1イニングを無失点に抑えた。チームは初戦敗退[2対3]も、次につなげる救援登板となった


2026年は二本柱構想


 胸板からウエストまで体幹周りが実に分厚い。一目でトレーニング量の分かる北の豪腕が京セラドームのマウンドで自己最速を塗り替えた。JFE西日本との日本選手権1回戦で北海道ガス・北嶋洸太が1点ビハインドの8回裏に救援。入社1年目の右腕は自己最速タイとなる153キロを2度投げ込むだけでなく、三振を狙った球が155キロを計測し大舞台で進化を証明した。三者凡退に抑えると、右の拳を小さく握り「景色が良くて高さもあったので投げやすかった。1点差に詰め寄ったので、なんとか勢いをつけて9回、最後の攻撃につなげたいなという思いでした。1年間やってきたことが出せたかなと思います。やっぱり真っすぐで打ち取るというのをやっていたので、それが体現できてよかった。155キロを目標にしてずっと取り組んできて、出たので、また違う目標を立ててやっていこうかなと思います」と振り返った。

 強烈なインパクトを残した13球に工藤賢二監督は「夏以降はあのぐらいのピッチングしてくれると思っていました。(魅力は)真っすぐの強さ。村上一人に頼っていた投手陣だったのですが、もう一皮むけてくれたらなと思っています」。この試合で先発した村上大芽(立命大)とともに2026年はチームの中心となることを期待していた。

無念の2年前のドラフト


 北嶋は今でこそスピードでねじ伏せられるが、中学時代は速球派ではなく制球力で勝負するタイプだった。球速が上がったのは駒大苫小牧高時代。進学先の決め手になったのはあこがれの投手の背中だった。目標とする選手は日本を代表する右の本格派、日本ハム伊藤大海。兄が伊藤と函館東シニアで同級生だった。「大海さんにずっとあこがれがあったので、同じ高校で野球したいと思っていたのと、自分が見たときに甲子園が一番近いのが(駒大)苫小牧かなと思ったので、それで行きました」。高校1年の秋前に肘を疲労骨折したが、球速は2年春には140キロを超え、背番号1を着けた。

 3年時には140キロ台中盤を記録するようになっていた。「きつかったですけど、すごく濃かった3年間。今の自分の糧になっています」。甲子園出場はかなわなかったが、速球派投手としての自信を深め、卒業後は強豪ひしめく亜大に進学した。「やるからには、上の世界でやりたかった。たまたま亜細亜大学さんに声を掛けていただいて、それで決めました」。リーグ戦デビューは1年春と好スタートを切った。青学大には同世代の佐々木泰(広島)や西川史礁(ロッテ)がいたほか、チームメートにも力のある選手がゴロゴロいた。「昨年10月のドラフトで指名された齊藤(齊藤汰直、広島2位)だったり、山城(山城京平巨人3位)は1学年下ですけど、すごく刺激になるというか、負けられない思いではいました」。高校でもみっちり練習をしてきたつもりだったが、大学の練習はトレーニングも走り込みも厳しさを増した。

 レベルの高い環境と質より量を求められるような雰囲気の中、ハードワークのかいあって球速は153キロをマーク。4年生になると先発に定着し、春に2勝2敗、防御率2.81の成績を残す。秋にはプロ志望届を提出した。春も秋も防御率10傑入りを果たしたが、ドラフトで名前は呼ばれず。伊藤に結果を報告すると「腐らずにあきらめずにやれよ」と励まされた。気持ちを切り替え地元・北海道に戻って腕を磨く道を選んだ。「周りから見れば、雪が降ったり、寒さだったり、環境が悪いかもしれないですけど、環境を言い訳にしていたら成長しないと思うので、成長できる場所でやろうと思ったんで北海道ガスを選びました」。指名漏れした理由について、自己分析では球速が出ていても、真っすぐで空振りが取れていなかったことを挙げた。北海道ガス入社後も最大の武器であるストレート強化に取り組んだ。

磨きをかける豪速球


 体は丈夫で故障が少ない。もともと強かった上半身に加えて、下半身強化にも力を入れた。フォーム面でもチームメートの助言により脱力を覚えた。求めたのは差し込めるストレート。その取り組みの成果が日本選手権で披露した投球だ。「球速が出なくてもいいから、真っすぐで差すというのをやってきたので、それが今日、詰まらせたりできたかなと。思い切り投げるだけじゃなく、バッターから速く見えるようにという感じでやってきました」。力任せに腕を振ったのではなく、制球面も安定していた。左右どちらもインコースを突いた。「あそこに投げないと、抑えられないなと思うので。ここに投げられているんで、今日は抑えたかなと思います」。

 捕手の話では低めでもノビが強くなったという。スライダー、カーブ、ツーシームと横の変化球も操るがオフのテーマはストレートをさらに磨くつもりだ。「もう一段階、真っすぐで空振りを取れるようにする。あとは、先発できるようになりたい。2つをテーマにして頑張りたい。安定して結果を出せるピッチャーになっていきたいなと思います。2年目は先発をしてなんとかチームを勝たせられる、全国で勝てるようにやっていきたい」。

 北嶋が一段階レベルアップを果たしている間に、あこがれていた背中はプロの世界でも頂に登り詰めていた。伊藤は日本ハムのローテーションの柱として腕を振り、14勝、防御率2.52。195個奪三振で12球団トップの6完投をマークした。この活躍で、シーズンで最も活躍した先発完投型の投手を表彰する沢村賞を初受賞。あこがれはより強くなった。「ああいう安定したピッチングをできるようにとは目指して頑張っています」。ヒーローの背中は、今はまだはるかかなたの遠い世界。だが同じ舞台で肩を並べる姿を夢見て豪速球に磨きをかける。


PROFILE
きたじま・こうた●2002年8月1日生まれ。北海道出身。175cm86kg。右投右打。磨光小3年のときに磨光クラブで野球を始める。小5までは内野手、小6から内野手と投手を兼任。尾札部中時代は函館東シニアに所属。3年夏にはシニアの東日本大会に出場。駒大苫小牧高では1年春からベンチ入り。2年春から背番号1。2年春の全道大会優勝が最高成績で、甲子園出場経験なし。3年夏は北海道高野連主催の独自大会(南北海道大会)準決勝敗退。亜大では1年春の中大1回戦で、救援として初登板。東都一部リーグ通算21試合登板、4勝5敗、防御率3.26。25年に北海道ガスに入社し、社会人日本選手権1回戦(JFE西日本)で救援登板。最速155キロ。変化球はスライダー、カーブ、ツーシーム。
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