2021年のドラフトで1位指名を受けたDeNA・小園健太の母校に剛腕がいる。昨春のセンバツで素材の良さアピール済み。最終学年は結果が求められる。 取材・文=沢井史 
エースの自覚十分。夏の甲子園出場を目指して練習に励んでいる[写真=沢井史]
ドラフト候補に浮上
横浜高との昨春のセンバツ1回戦。右腕エース・土井源二郎に代わり、3回途中から救援した
丹羽涼介は6回2/3を投げ、2安打1失点。8奪三振でストレートは147キロをマークした。チームは初戦で惜敗(2対4)したが、ネット裏で視察したNPBスカウトはざわめいた。
相手は同大会で優勝した強力打線。自身初の甲子園でのマウンドで好打者を相手に快投したことで、翌年のドラフト候補に浮上。力で押すだけではなく、キレ味鋭いスライダー、カーブも駆使し、
阿部葉太(早大進学)、
奥村頼人(
ロッテ)ら好打者からも変化球で三振を奪った。
「横浜との一戦は、ミットを目がけてしっかり投げることだけを考えました。どの打者に対しても両サイドをうまく使って投げられましたし、インコースを突いてファウルを打たせられました。真っすぐを使えたので、変化球が生きたと思えた試合でした」
大舞台で得た自信を胸に夏の和歌山大会に臨み、大一番となった智弁和歌山高との準々決勝を迎えた。初回からストレートは140キロ台後半を立て続けにマークしたものの、甘く入ったボールをとらえられた。初回からいきなり2本の長打を浴びるなどし、3失点。以降も苦しみ、5回途中5失点で降板した。チームは0対7(8回
コールド)で敗退した。
「絶対抑えないといけないという気持ちが、力みにつながってしまいました。ストライク率もすごく悪かったです」
センバツ以降、投手陣を含めてケガ人が続出。思うようなチーム状態ではない中で、2年生・丹羽が奮闘してきたことを半田真一監督は振り返る。
「丹羽に負担がかかった分、本人は何とかしなくては、という意識が人一倍強くなったかもしれません。智弁(智弁和歌山)との試合で、初回の先頭の藤田(藤田一波)君から三振を奪った場面もすごく良かったんです。ストレートは148〜149キロくらいは出ていましたし、全体としては悪くはなかったんですけれどね……」
未完の大器からの脱皮
1年春に公式戦デビューを果たした丹羽は、ここまで順調な歩みを進めてきた。同夏にはストレートの球速が140キロを超え、2年春には150キロに到達した。センバツを控えた昨冬は、メディシンボールを壁に強く投げることで身体の出力を上げることに努めた。ウエート・トレーニングでパワーもつき、昨春以降、体重は80kg前後をキープしている。
「体重が80kg前半ないとボールが軽くなってしまうので、試合がある時期は80kgくらいを維持するようにしています」
市和歌山高の150キロ超の豪腕と言えば、21年春にチームをセンバツ出場に導いた小園健太(DeNA)が思い浮かぶ。
「小園さんは憧れの存在です。中学時代に見た小園さんは速球派で、自分もあんなボールを投げたいと思いました」
丹羽が快投するたびに「小園二世」という見出しが目についたが、半田監督はその呼称に、やや否定的な見解を示す。
「丹羽を『小園二世』と私は思っていません。むしろ、比べるのはちょっとかわいそうというか……。小園はある程度、完成されていた部分がありましたが、丹羽はまだまだ。むしろ課題が多いピッチャーだと思っています」
背番号「1」を着けて臨んだ昨秋は、本人によるとフォームがやや不安定だったという。何とか修正し、日高中津高との県大会準決勝では13奪三振で1失点完投勝利を挙げ、復調の兆しを見せつつあった。和歌山2位で出場した近畿大会では大阪桐蔭高との1回戦で、8回10安打5失点。この試合でもボール先行の苦しい投球となり、四死球は7個。チームは1対7で初戦敗退となり、事実上、センバツ出場は絶望的となった。大一番で本領が発揮できない、もどかしさがある。
「智弁和歌山高戦もそうですが、大阪桐蔭高の打線も甘いところに行ったら打たれる、と思って少し慎重に行き過ぎたのもありました。もっと大胆に行ったら良かったのかな、と。内容から見ても自滅という感じだったので悔しかったです」
実は秋の地区大会で正捕手が負傷したことで、変化球を思うように操れなかった事情もあった。それでも本人は「制球力が一番の課題」と言い訳をしなかった。
究極の負けず嫌い
今年の高校3年生世代は山梨学院高・
菰田陽生や横浜高・
織田翔希、沖縄尚学高・
末吉良丞とドラフト上位候補の投手が名を連ねる。織田とは昨春のセンバツで対戦し、剛速球に目を奪われた。
「織田君は体が細いですけれど、その分、操作性が良いのかなと思いました。体の使い方がすごくうまいので、あれだけ速い球が投げられるんですかね。実際に対戦して、本当に球が速かったです。末吉君は
ロングリリーフでもすごい球を投げられるので、技術はそうですけれどメンタル面も強いです。同級生は僕よりすごいピッチャーばかりいるので、負けていられないというのはもちろんあります」

好きなプロ野球選手はドジャース・山本由伸。スケールの大きい投手を目指している[写真=松村真行]
この冬は体の軸をつくり上げるために、フィジカル面を課題に挙げた。
「体の根本的な部分を強くしていきたいです。ただ、自分は体が硬いので、柔軟性もそうですし、操作性ももっと上げていかなくてはと思います。そうすれば球も強くなるし回転数やキレも上がっていくはずです。体重の増やし方も、ただ増やすのではなく筋肉量も含めて、しっかり考えながら増やしていきたいです」
こだわるのはやはりストレートの強さだ。理想は「分かっていても打てないストレート」と本人が言うように、スピード以上に質、キレにこだわった速球をこの冬でしっかり磨き上げていく。
「まずは、四球を出さないこと。レベルの高いバッターを相手にしてもしっかり抑えて、チームを勝たせられるピッチャーになりたいです」
勝負は夏一本である。冬の鍛錬を経て、春にどんな姿を披露できるのか。高校生世代の注目右腕の1人として、その1球1球から目が離せない。
PROFILE にわ・りょうすけ●2009年2月10日生まれ。和歌山県出身。183cm84kg。右投右打。名草小1年時、名草少年野球団(軟式)で野球を始め主に外野手。4年時から投手。明和中では紀州ボーイズでプレーし投手として2、3年春に全国大会に出場し、3年時は準優勝。市和歌山高では1年春に背番号14でベンチ入りし、2年春(同11)のセンバツは1回戦敗退。エースとなった2年秋は近畿大会1回戦敗退。最速150キロ。変化球はカーブ、スライダー、カットボール、フォーク。