これ以上の冠が思いつかないほどの、極上の本塁打だった。代打、逆転、サヨナラ、満塁。しかも、この一打が近鉄12年ぶりの優勝を決めたのだから。今はなき球団だからこそ、記憶にとどめておきたい名シーン。史上最も劇的な優勝決定を演出した主役が、当時の興奮を振り返る。 取材・構成=富田庸 代打の準備中にチャンスは広がり
2001年9月26日のオリックス戦、大阪ドームが興奮のるつぼと化した。2対5と、3点リードされた9回。敗色ムードは濃厚だった。回って来るかも分からない代打の準備をしていると、あれよあれよという間にチャンスが広がり、出番が到来する。そこで飛び出したのが「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」だった。これ以上のない場面で、北川博敏は最高の結果を残した。まさに球史に残る劇的な一打。もちろん、その主役の胸にも深く刻まれるシーンとなった。 この試合のことは、事あるごとに聞かれます。うんざり?いえいえ、あれがあるから今の自分があるわけですし、何度聞かれてもうれしいものですよ。でも、僕の中ではホームランを打てたことよりも、優勝できたことのほうがうれしいんです。「地元・大阪で胴上げがしたい!」。その気持ちが強くて、実際に実現させることができたから、やっぱり一番の思い出ですよね。
試合は、“あの瞬間”以外は今でも鮮明に覚えています。9回表が終わった時点で2対5と、近鉄は3点差で負けていました。代打で行くことは攻撃が始まる前に決まっていて、九番の古久保(
古久保健二)さんのところで行くということでした。それで順番を数えたら4番目で、「1人出なきゃ回ってこないな……」と。ベンチ裏でバットを振っていたところ・・・
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