本職の捕手以外のポジションにも取り組むことで選手としての可能性は広がっていく。ただ、その先に“コンバート”という答えはない。あくまでも、自分は「捕手」だ。捕手はやめない。今までにいなかったマルチプレーヤーへ、将来のビジョンは、しっかりと描けている。 文=喜瀬雅則(スポーツライター) 写真=湯浅芳昭、井沢雄一郎 練習から大忙し
試合前のシートノックは、まず外野手から始まる。フライの見え方を確認し、長打を想定した内野への中継プレーを行い、最後はヒット性の当たりを捕ったあと、本塁へダイレクト送球を行う。それを締めくくりとして、各々が守備位置から引き揚げてくる。
谷川原健太が右翼から強烈な返球を見せると、外野手へのノックは終了となる。ところが、谷川原だけは外野手の輪から離れ、小走りで右翼の守備位置から一塁側のファウルゾーンを経て、本塁後方へと回っていく。ホームベースの右横、左打者のバッターボックス付近に、レガースが2つ、裏側を空のほうへ向けた形で置かれ、その上にはキャッチャーミットが乗せられている。谷川原はそれを急いで着けると、今度はキャッチャーのポジションに就き、ノックを受ける。
「毎試合。外野から戻ってやるんです。やっておいたほうがいいかなと思って。セカンドスローとかもあるんで」 谷川原は『捕手登録』。だから、捕手の練習をするのが、むしろ当たり前のことでもある。ただ、2022年は、試合終盤に入ってからの代走、あるいは外野、特に右翼の守備固めに入るケースがもっぱらで、外野手として57試合に出場も、捕手としての出場は8試合にとどまっている。それでも、そのマルチぶり、外野兼任の捕手であることが、谷川原の大きな
セールスポイントの一つでもある。
「やっぱり、それが武器なんで。ほかの人と違って、そこで自分は勝負していきたいなと思っています。もちろんキャッチャーが難しいというのは分かっています。そんな簡単ではないんですけど、キャッチャーをやめないほうが自分にはプラスだと思うんです」 試合前の谷川原は、何とも慌ただしい・・・
この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。
まずは体験!登録後7日間無料
登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。
登録済みの方はこちらからログイン