走るときに見せる思い切りの良さは、バットを振っても変わることなく、今季は待望のプロ初本塁打が飛び出した。パ・リーグ盗塁王の獲得から2年。ロッテ・和田康士朗は、現在も少しずつ進化している。止まらずに、止まらずに、走り続ける。 文=小田原実穂 写真=桜井ひとし 
ロッテ・和田康士朗
プロ初本塁打の喜び
50メートル走5.8秒の俊足で颯爽とダイヤモンドを駆け回る。球界屈指のスピードスター・和田康士朗。プロ野球選手としては異色の経歴を持つ男が、いま新たな成長を見せている。
敵地で行われた7月29日の
ソフトバンク戦(PayPayドーム)。九番・中堅でスタメン出場。0対0で迎えた3回一死だった。相手先発・
大関友久の144キロの外角低め直球をとらえた打球は右翼ホームランテラスへと飛び込むプロ1号。
「感触も覚えてないです。入ると思わなかったので一生懸命走っていました」 いつものごとく快足を飛ばし一塁を蹴ったが、観客の歓声、ベンチにいるナインのリアクションで察知すると、ゆっくりとダイヤモンドを回った。打球が入った途端、驚きの表情を隠せなかった
吉井理人監督にはグータッチで祝福され、
ポランコからは祝福のハグ。プロ6年目にして初のホームランボールを手に
「勝てたことが何よりうれしいですね」と照れくさそうにはにかんだ。
予兆はあった。6月25日の
日本ハム戦(ZOZOマリン)で和田は7回裏に
角中勝也の代走で出場。交代後の打席となった3点リードの8回裏二死。日本ハム・
玉井大翔の外角低めの直球を振り抜いた。打球は高々と右翼方向へ伸びたがポール手前で切れる特大ファウル。観客もベンチも初ホームランを予感し総立ちとなっていたが、惜しくも入らなかった。結果は四球で出塁も、球場の盛り上がりは最高潮だった。その1カ月後に正真正銘の初ホームランをマーク。デビュー当時は主に代走だった男が、プロ6年目でさらに飛躍を遂げた。
衝撃のデビューから3年
和田の衝撃的なデビューを覚えている野球ファンは多いだろう。2020年8月16日の日本ハム戦(ZOZOマリン)。その時は突然に訪れた。選手ロッカーに張り出されたスターティングメンバー表に「一番・中堅・和田」の文字。出場24試合目のプロ初スタメンだ。
「打ち間違いかなと思いました。それに最初は七、八、九番かと思っていたので」 動揺を隠せず・・・
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