幾度となく、苦難を乗り越えてきた荻野貴司の15年目が幕を開けた。先発、途中出場でも抜群の存在感を発揮。ロッテ一筋でファンとともに歩んできた俺たちの誇りが、50年ぶりとなる悲願へと導こうとしている。 文=竹内夏紀(報知新聞) 写真=高塩隆 ロッテ・荻野貴司
経験豊富なベテラン
今年もロッテにはこの男がいる。2024年3月30日、
日本ハムとの開幕2戦目。本拠地ZOZOマリンスタジアムの電光掲示板には「一番・右翼」に荻野貴司の名があった。
ロッテ一筋15年目。チーム最年長。38歳の切り込み隊長は、第1打席は
「チームの1番目に打席に立つので、チームに勢いをつけられるような打席にしたいといつも思っています」と初球から果敢にスイングし、惜しくも一ゴロ。相手先発・
加藤貴之に3回まで完璧に押さえ込まれていた中、4回の第2打席で流れを変えた。カウント1-2から内角低めのスローカーブをすくい上げるとレフト線にポトリ。二塁打でチャンスメークすると、続く二番・
藤岡裕大の遊ゴロでは瞬時の判断で三塁へ。執念のヘッドスライディングで野選を誘って無死一、三塁とすると、三番・
ソトの先制2点適時打で先制のホームを踏んだ。
6回先頭では、真ん中低めに落ちるフォークに腰を低く落としながら対応し、技ありの中前打で出塁。三塁に進むと、ソトの左飛でタッチアップし、再び執念のヘッドスライディングでホームを陥れた。今季初先発で4打数2安打2得点。リードオフマンとしての役割を十二分に果たした。
ベテランの勝負強さは健在だ。開幕2カード目の頭を落とし、迎えた4月3日の
ソフトバンク戦(PayPayドーム)。1点リードで迎えた9回裏一死一、二塁という一打同点の場面で、レフトの
ポランコに代わり、守備から途中出場した。試合は、守護神・
益田直也が本調子ではなく、その9回に押し出しの四球で同点に追いつかれ、今季初の延長戦に突入。嫌な雰囲気が漂う中、12回表の二死一、二塁のチャンスで荻野に打席が回ってきた。
「野手陣が点を取ってあげられてなかったし、投手陣が粘り強く投げていたので何とかしたかった」 果敢に初球を振り抜くと、前進守備のレフトの横を鋭い打球が駆け抜けた。
「(左翼の)近藤(近藤健介)選手がダイビングして捕られると思ったけど、なんとか抜けてくれてよかったです。みんなの気持ちが乗ったのかもしれない」 左中間への勝ち越しの2点適時二塁打。殊勲の二塁上では、ベンチで総立ちとなったナインに両拳を突き上げ、お祭り騒ぎのレフトスタンドにも右手を上げて歓喜の声援に応えた。チームは今季初の延長戦を制した。
今年も開幕に順調に仕上げてきた。オープン戦は14試合中11試合に出場。3月19日の
巨人戦(東京ドーム)では6回に代走で途中出場。迎えた9回の第1打席には初見の巨人ドラフト1位右腕・
西舘勇陽の高速クイックから放たれた直球をレフトスタンドに運び、勝ち越しソロにした。
「初めてのピッチャーだったので・・・
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