待ちわびた連日の快音だ。ポテンシャルの高さを示し続けるも、新人年から故障に泣き、一軍に定着できずにいたが今季は一時離脱があったものの、中軸を担って打線をけん引。苦しさを乗り越えて増した輝き──。ただ、目指す光りは、まだ先にある。 写真=宮原和也 守った約束
“Bのイズム”を継承する男が、今日も目を輝かせている。プロ6年目の今季、レギュラーの座をつかもうと、貪欲な姿勢を貫く。
「僕は昔から何回もチャンスをもらってきた立場なので……。何回もチャンスをいただいてきた中で、今年に入ってから、ようやく実になってきている感じがしますね」 23歳の苦悩は、ボロボロになったバッティンググラブや、汗にまみれたヘッドバンダナだけが知っている。かみしめる試合に臨める幸せ──。2019年にドラフト1位でオリックスに入団し、高卒1年目から強打者として名をはせ、内角を攻められることも少なくなかった。思いもよらぬ死球で負傷離脱し、シーズンの大半をリハビリ生活に費やしたこともある。大阪・舞洲にある寮に隣接する室内練習場で、快音を響かせる日々を回想して言う。
「そこは……。大変な時期、しんどい期間も、もちろんありました。だけど『未来の自分のために頑張る』という感じで乗り越えることができました」 レギュラーとして、毎日の試合を戦うには、メンタルや技術力の前に体が必要となる。試合に出場できる日々に
「もう、そこが一番ですね。それが一番、幸せなことだと思います。『結果を残す』という前段階の問題なので。まずは『毎日、野球ができる』ということを楽しめています」。グッと握るバットには思いが込められている。
迎えた今季、胸中はワクワクとドキドキが入り混じっていた。
「自分の中では、シーズンが始まるまで不安がありましたね。考えてみると、不安のほうが大きかった。その中でシーズン最初のほうは結果も出なかったので『自分の実力はこのぐらいなのかな……』と思ってしまう時期もありました。ベンチスタートも多かったので、なかなか気持ちの切り替えが難しい時期もありましたね」 開幕一軍スタートを切るも、思うように状態が上がらず。5月5日に出場選手登録を抹消された。
きっかけが欲しかった。
「今、考えてみれば『良かった期間』になりました。あのときはもちろん、必死でしたけど。とにかく自分の状態を上げて、すぐ一軍に戻れるようにと考えていました」。同じ轍を踏みたくなかった。
「一軍に上がるチャンスをつかむことも大切ですけど、昇格をつかんだだけでは生き残れない。昇格して1試合目に結果を残せる準備が必要だと感じながら、ファームで練習に取り組んでいたんです。(一軍に)上がって1試合目が大切だと、チームの全員が分かっていることだと思います。そこで力まずに、きっちりと。いかにファームでやってきたことができるかというのが、難しいところなんですけどね」 5月17日に再昇格すると、本拠地・京セラドームでの
楽天戦に七番・一塁でスタメン起用され、4打数2安打1打点とアピールに成功。試合は3対5で惜敗しただけに、ほんの少しだけ拳を握りしめた。
ファームで過ごした12日間は・・・
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