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ロッテ・国吉佑樹 逆境を知る「いろいろな人が僕のピッチングを見てくれている。本当に幸せ」

 

9月17日の楽天戦(楽天モバイル)で失点するまで、24試合連続無失点の球団記録を更新していた。ロッテのブルペンの屋台骨を支える長身右腕は、移籍4年目。今、とても脂が乗っている。
文=梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報室長) 写真=兼村竜介

ロッテ・国吉佑樹


シーズン中のトレード


 アニメ『進撃の巨人』のテーマ曲『紅の弓矢』がZOZOマリンスタジアムに流れると、それは国吉佑樹の出番である。身長196cm。小学校6年生のときにはすでに175cmはあったという国吉がマウンドに立つと2m以上はあるのではないかという錯覚にすら陥る。この曲を登場曲に選ぶきっかけとなったのはベイスターズ時代にお世話なった林昌範元投手の存在。二軍にいるときにかわいがってもらった。

「身長の高いお前に似合う曲だ」と勧められてから使うようになった。マリーンズへのトレード移籍を機に変更することも考えられたが「せっかく林さんに選んでもらった。ファンの方にも馴染みがあるし、僕も愛着がある。だから、このまま行こうとなりました」と話す。律儀な男である。林さんからは移籍のときに「頑張れよ」と激励のメッセージをもらった。当時、「そういえば林さんは千葉県出身。縁ですね」と国吉は笑みを見せた。今ではこの登場曲が、すっかりマリーンズ・ファンにもお馴染みだ。

 トレードが発表になったのは2021年6月14日。その前日、飛行機が羽田空港に到着し、機内から出るとマネジャーに「明日、球団事務所に行ってくれ」と呼び止められた。この日までは交流戦。札幌ドームでのファイターズとのデーゲームを終えて空路、移動しリーグ戦再開に向けて気持ちを入れ直していた中で球団事務所に呼び出された。時期的にもトレードであるとすぐに察した。

「その場では何も言われなかったけど、トレードだなとは直感がありました。翌日、事務所に行くとマリーンズの有吉(有吉優樹)さんとトレードが決まったからと言われて、すぐに発表になりました」

 09年育成ドラフト1位でベイスターズに入団。11年に支配下登録され先発、中継ぎと活躍。在籍12年目のシーズン途中でのトレードには当然、寂しさがあったが前を向いた。そのシーズンはそれまで18試合に登板して1勝1敗、防御率5.16。

「主に先発が早い回に降板したときに試合を立て直す役割を担っていた」と振り返る。決して本人も満足いく成績ではなかった中でこのトレードは気持ちを一新する良い機会と捉えることができた。そしてマリーンズに縁を感じることもあった。

 トレードが発表になったときにすぐに連絡をくれたのは、ベイスターズとマリーンズの両方に在籍をしていたことのある元チームメートの2人の外国人選手。一人は20年までマリーンズに在籍していたチェン・グァンユウ投手。そしてもう一人は19年にマリーンズにいたブランドン・マン投手だ。

「2人とも投手で、ファーム時代に同じ時間を過ごすことが多かったということもあり、いつの間にか、よく話す仲になっていました。ブランドンとは家に遊びに行ったり、自分が横浜の街を紹介したりするなど、球場以外のプライベートでも一緒に過ごしました。日本語を勉強したり、平仮名を使ったりするなど、すごく前向きで積極的な性格で、そういう性格だから誰とでも仲良くなれるのだと思います」と国吉は懐かしそうに話す。

 チェンがベイスターズでチームメートだったのは11年から14年。ブランドンが11年と12年の2年間。2人とはその後も交流を続けた。マリーンズ入りが決まると・・・

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