来季の先発5番手を秋季キャンプ中に明言した金本知憲監督。その名は「青柳晃洋」。今季ドラフト5位で入団。変則的アンダースローから最速147キロを投げ込むパワー投手。ルーキーイヤーは4勝5敗を挙げた。持ち味は「荒れ球」。ただ、5敗はいわばコントロール難による自滅。これをどう改良し、ステップアップしようとしているのか――。その答えに関し、青柳自身にはプロ1年間の経験で確かな道筋が見ているようだ。 取材・構成=椎屋博幸、写真=前島進(インタビュー)、BBM 意見交換をして一石二鳥の投球術を
アンダースローから、力強い真っすぐを投げられると、球筋を見慣れていない打者は簡単には打てない。この特性を生かしたかった1年目は、コントロールに苦しんだ。その理由は投球フォームがバラバラだから?それは少し違う。一番の要因は心の問題だった。そして、勝ち星をチームに付けるため、コーチ陣にもしっかり意見を求めるようになっていった。 今シーズンは四死球がすごく多く、その走者を1本のヒットでかえしてしまって失点を重ねることが多かったです。
これが今の僕の実力かな、と思ってはいるんですが、一方でコントロールなどを重視し過ぎて投げていたら、もっと打たれたのかもしれません。だから、理想は四死球にならない程度の荒れ球がたくさんあったほうが良かったんだと思います。自滅もありましたが、もう少し荒れ球が有効だったら、もう少し勝てたのかな、と思うところと、一方で、これが自分の精いっぱいだったのかな、と思う部分とがあるんです。
プロ野球の球審のストライクゾーンは、きっちりしているので、一度、そのコースを「ボール」と
コールされると最後までボール。つまり僕がストライクだ、と思っていてもボールだと、マウンドを降りるまでボールになる。
そこがまさに僕の課題だったんです。つまり心の問題ですね。例えば、2ストライクと追い込んで、最後、個人的にはすごくいいボールをいいコースに投げ込んで「見逃し三振だ!」と思った瞬間に「ボール」と判定される。そこで、切り替えられない自分がいたんです。「なんでボールなんだ?入っているよ」と。そこから自滅というか、結局その打者に四球を与えてしまって……ということが非常に多かった。
僕の勝手な決めつけによって、自滅してチームに迷惑をかけていました。今思い返せば、「うわあ、そこストライク入っているでしょう!」と思うことで、もうメンタル的に負けていて、精神的な甘さがあったんです。シーズンが進み、自分でいろいろと分析していくうちに、そういう判定をされた後に四球を出して、失点しているな、ということに気が付くなど、自分で分析できる力も付き始めました。
当然最初は勝った、負けただけの意識だったのですが、プロのレベルは非常に高いので、その意識を強く持つ必要があると感じたんです。プロでは、味方の守備のミスで走者を出すことはまずない。走者を出す要因は、四死球か被安打になる。それは自分のミスですよね。だからなおさらいろいろなことを考えるようになりました。
最初は投手コーチに言われたことを受け入れていたんですが、それだけだと自分が向上しないな、と感じ始めたんです。まだまだルーキーで、最初は言わないほうがいいのかな、と思っていました。でも、自分はこうしたかったと勇気を持って話したら、香田(
香田勲男投手コーチ)さんから「そういう考え方だったのか」と返ってきて、さらに意見をいただいたんです。そこからですね、自分の考えをしっかり伝えた上で、最善の策を見つけていく形になったのは。それまでもアドバイスに関して投手コーチ2人(香田、
金村曉投手コーチ)の意見が食い違うこともありましたし、僕の意見も違うところがあった。これは自分の意見も伝えないともっと食い違うな、と。
それ以降は、香田さんに自分の考えを伝えてから香田さんの意見を聞きます。そして次に金村さんに「香田さんにはこういうアドバイスをされましたが、どうですか?」と聞きに行きます。そこからさらにキャッチャーからの視点も欲しいので、バッテリー担当の矢野(
矢野燿大作戦兼バッテリーコーチ)さんにも聞きに行きます。
特に香田さんと矢野さんの考え方、とらえ方は専門分野が違うので当然違う部分がある。その中から自分にいいものを取り入れていくという形でやっています。例えば、香田さんはけん制のパターンが多いほうがいいと思っているので、いろいろと教えてもらい、そこから自分でこれはいいな、と思うものを取り入れています。一方で、矢野さんは、けん制を多投するよりはクイックができるようになるほうがいいという考え方を持っています。そこで僕はクイックの練習もします。これってどっちも自分のモノになれば大きな武器になるじゃないですか。一石二鳥ですよね(笑)。そこはどん欲にいきたいと思っているんです。
一般的には、サイド、アンダースローはオーバーハンドよりもクイックが遅くなると言われていますが、
西武の牧田(
牧田和久)さんなどは究極に速いので、見習いたいですし、それをしながら自分の投球フォームをどう維持していくのかも研究しなければいけないと思っています。
また試合後の意見交換の中で、僕の見解があいまいなときは、「はっきりさせたほうがいい」などの指摘も受けます。そういうこともあり、しっかり自分の投球に関して考えていくようになりましたね。

6月2日の楽天戦が一軍デビュー、初先発。しかも初勝利となり金本監督と握手を交わす。ここから先発として13試合に起用され4勝を挙げた
ツーシームの出し入れだけで打者を打ち取れる投手へ

9月8日の巨人戦[甲子園]、7回まで巨人打線を無失点に抑えるも、8回一死後、まさかの連続死球で降板。その後を受けた藤川が逆転3ランを打たれ負け投手に。「ここも自分が投げ切らないと」と深く反省している
6月に昇格後、金本監督は青柳を先発で使い続けた。打者出身監督の目線で打ちにくいボールを投げる青柳に懸けたのだ。そのチャンスを生かしたのか……できない部分が多かったが、そこを課題として秋季キャンプにも臨み、けん制、クイック、そしてコントロールにも向上を見せた。そして、金本監督も条件付きだが、強い真っすぐを投げられることを理由に、来季の先発5番手を明言。一方、青柳本人は、自信のある真っすぐより速いツーシームに磨きをかけ2ケタ勝利を目指している。 実際に一軍初先発(Koboスタ宮城=6月1日)も緊張しましたが、一番緊張したのは、甲子園でのオープン戦(3月5日=
ロッテ戦2回を1安打3四球)でした。ストライクが入らなくて……10球連続ボールになりました(苦笑)。最初はものすごい緊張でストライクが入らず、落ち着いてきたら「やばいぞ、やばいぞ」と焦ってきてストライクが入らなくなりました。後ろを見ると一軍の選手たちが守っていて「わあ、やっちゃってるよ」と(笑)。でも、それが大きな失敗だったので、一軍の初先発は前日に言われたのですが、そこまで動揺することもなかったですね。でもマウンドに上がったらやはり緊張しました。
初先発は四死球が多かったですね……本当に多かった(笑)。5回で5四死球。相手は交流戦の楽天。気持ち的には「今季対戦のないチームだから」と思い切っていけた部分はあったので、僕の中では悪い四死球ではなかったと思っています。被安打数(3本)も少なくて良かったと思いましたし、野手の方々に助けてもらった中でのプロ初勝利。純粋にうれしかったですよ。それまでは二軍で中継ぎをやっていて3イニング以上投げていなかったので、5回になったらヘロヘロでしたけどね(笑)。
今季は4勝できましたが、この勝利数よりも、負けが続いた時期(8月20日から3連敗)に監督さんが起用し続けてくれたことが大きかったです。そのことを考えると出来過ぎな1年だった。でも4勝したからといって、来季同じようなチャンスをいただけるとは思っていません。また、新しい投手も入ってくるのでどうなるのか分かりません。それでも、先発ローテーションを1年間守り、2ケタ勝利も目指したいので、来年が勝負だと思っています。
一方、5敗の部分を分析すると、投球数が多いんです。打ち取っても3ボール2ストライクになることも多い。それで長いイニングを投げられなかった。長いイニングを投げられることが先発の役目だと思いますし、それができていたら5敗はなかったかなあ、と。
だからこそコントロールも含め、もっと僕自身のレベルアップをしていきたいんです。僕の持ち味はアンダースローでも強い真っすぐを投げられることと真っすぐより速いツーシームを投げられること。今の球速を維持しつつ、コントロールを良くしてきたい。右打者の内角に食い込むツーシームがストライクゾーンに入ってくれればなかなか打たれることはない、と思っているんです。しかもシンカー気味に落ちて、真っすぐよりもスピードが出るので、もっともっとそこを生かす投球をしたい。そのツーシームを自分の中で、ストライクゾーン、ボールゾーンに投げ分けられる技術を身に付けられたときは、そのボールだけで勝負できるんじゃないか、と思っているんです。
また秋季キャンプではクイックやけん制、フィールディングの課題を持って考えながら取り組んだ結果、自分の中で良い感覚を持つことができました。この良い感覚を持ったまま、台湾でのウインター・リーグで試したいです。実戦ばかりなので、そういうことをしっかり試してやっていきたいと思っています。オフも球団にそういう機会をいただきました。トレーニングをもっと積んで2ケタ勝利を目指し、来季のキャンプを迎えたいと思っています。
【番外編】初めての思い出

6月1日 対楽天@Koboスタ宮城 初奪三振
このお題を聞いて、まず思い出したのが、初の安打がバントヒットでした。何か史上4人目の記録だとか……でも僕は投手なので投手部門が良いんですよね?では初奪三振。初先発の2回、中川(
中川大志)選手からですが……。緊張の中で投げた初登板で、打者一人ひとりアウトを取るのに必死で、試合に集中をしていたことで、降板してから、そのことを思い出したというか「そういえば」という感じでした。初勝利の感想もまったくそんな感じなんですよね(笑)。
PROFILE あおやぎ・こうよう●1993年12月11日生まれ。神奈川県出身。右投右打。181cm79kg。川崎工科高から帝京大を経て、2016年ドラフト5位で
阪神入団。開幕一軍を果たすことはできなかったが、6月1日の楽天戦(交流戦)で一軍デビューが初先発初勝利となった。変則的アンダースローから140キロを超えるパワー速球とツーシーム、スライダーを駆使する。来季も先発投手として2ケタ勝利を目標にしている。
ユーザープレゼント
青柳晃洋選手の直筆サイン色紙
※締め切りは2016年12月05日(月)、当選者の発表は賞品の発送をもって代えさせていただきます。※ご応募いただいた個人情報は、懸賞の目的以外での利用はいたしません。