マエケンの制球力はメジャーでも高評価
2014年、順調なスタートを切った
田中将大投手(ヤンキース)。シーズン途中で右肘を痛めるアクシデントに見舞われましたが、幸いにも手術という最悪の事態を回避する事が出来ました。開幕からの勝利数をみていると、シーズン終了までに20勝は軽くクリアするのではないかと思わせるぐらいの成績でした。
メジャーリーグはレギュラーシーズンが終わり現在はプレーオフが行われております。我々メジャースカウトの仕事は、ワールドシリーズ終了後のスカウトミーティングの為に資料の準備をする大事な時期でもあります。
オフシーズンに獲得を目指す選手、勿論日本を含む国際スカウトからの情報など各部署から最新情報をGMらに報告をする事になります。今年の田中投手の活躍をみていると日本人の技術を含む素質の高さを改めて確認出来ました。
さて皆さんも気になる事と言えば、田中投手のあとに続く、今オフの日本人選手のメジャー移籍だと思います。その注目されている選手についてお伝えしたいと思います。
「メジャースカウトたちが狙う今オフの日本人選手は誰なのか?」というと
広島のエース・
前田健太投手(26歳)ではないでしょうか。
実際、前田投手自身もメジャー移籍を希望しており、スカウトたちの注目度も高いです。私は田中投手に比べ、体力的な不安があると評価をする一方、昨年のWBCの実績もあり、何より制球力が抜群という事が高評価に上げられます。マリナーズの
岩隈久志とイメージがダブるというスカウトもいました。今オフ、前田投手のメジャー移籍が決まれば、手を上げる球団は複数出るのは間違いないと思います。
前田投手は海外FA権を取得するまでまだ3年も掛かるので、もしポスティングでの移籍を球団が容認するとなると、今オフの移籍も現実味を帯びてくるのではないでしょうか。前田投手の場合は年齢的に若い所も魅力です。ポスティング承認となれば、興味を持つ球団はかなりの数になるのではないでしょうか。

マエケンにはメジャーの複数球団が興味を示している(写真=BBM)
金子千尋よりも、オリックス平野、DeNA山口に熱い視線
我々のスカウトは、前田投手の他に評価を上げているのが、
オリックスの
平野佳寿(30歳)と
金子千尋(30歳)の両投手です。
平野投手の評価ですが、平均のストレートの球速も94マイル~95マイル(150キロ前後)あり、またスライダーとフォークのキレも素晴らしいです。何より四球が少なく、三振を奪えるのが最大の魅力です。但し今シーズン40セーブを記録しましたが防御率が3.43とクローザーでは決して良い数字ではありませんでした。このあたりを今後各球団が評価を下していくとなると思います。
平野投手と同じオリックスの金子投手も注目をしております。私の金子投手の印象は、とても故障が多く、メジャーの中4日の登板に耐えられるだけの体力があるかどうか? という点です。
金子投手の素晴らしいところは、変化球の多さとその精度の高さと、どの球種でもストライクが取れる事、どれもウイニングショットにできるだけのキレがある事です。昨年、パ・リーグの奪三振王を獲得し、また三振を奪えるのも魅力の一つです。
また他の選手では
DeNAの
山口俊投手(27歳)です。山口投手は
藤川球児投手(カブス)の全盛期より経験が浅く、まだ安定感はありませんが、年齢もまだ若く、何よりも藤川投手よりも肩、肘が消耗していない事です。その他に彼の魅力は体の大きさです。しっかりトレーニングを積み、まだまだスピードアップも望めます。アメリカで成功する可能性を秘めたピッチャーだと思います。残念ながら今年はスターター(先発投手)をしますが、もしアメリカに行く事が可能になれば私はクローザーの方が適任だと思います。
以上、投手についてお伝えしましたが、一方、野手についてはどうでしょうか。ここ数年名前が挙がっているのが、オリックスの
糸井嘉男選手(33歳)です。投手に比べて、日本人野手の評価は厳しいものがありますが、糸井選手のポテンシャルはメジャーでも通用すると思います。糸井選手の最大の武器は「スピード」です。スピードだけでも既にメジャークラスです。
ここ数年彼の視察をしていますが、
イチロー選手(ヤンキース)や
青木宣親(ロイヤルズ)と違い、一塁到達タイムはそれほど速くはありませんが、塁間のスピードなら、彼らと同等か、それ以上あるかもしれません。
最近ではメジャーリーグでも走塁やバントなどの小技を駆使する、「スモール・ベースボール」を採用するチームが増えている為、獲得する選手の傾向も変わっていくのではないでしょうか。現にタンパベイ・レイズやロサンゼルス・エンジェルスなどスモール・ベースボールを実践すると明言し、スプリングトレーニングから積極的な走塁練習を徹底させています。
最後に日ハムの
大谷翔平投手(20歳)にも今後も注目は継続していきたいと考えております。私は彼を高校生の時からみていますが、順調に成長をしていると感じます。近い将来、大谷投手がアメリカに移籍をするとなるとストレートだけでなく、変化球の精度も上げていく必要があると思います。
著者PROFILE 1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。メンタル・フィジカルのバランスの良い選手が好み。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。