
2009年以来のワールドシリーズ制覇へ補強は続く(写真=AP)
2014年の暮れにひとつのニュースが流れました。「ヤンキース黒田投手が日本復帰」アメリカでも大きく報道されました。多くのファンが約20億円もの契約をせず、約4億円の
広島カープとの契約を選んだ黒田投手に驚きました。私もその一人でした。さて15年最初のコラムは黒田投手との契約を結ぶ事が出来なかったニューヨーク・ヤンキースのこれまでの補強についてお伝えをしたいと思います。
年明け早々の1月1日にニューヨーク・ヤンキースはプロスペクトのマニー・バヌエロスを交換要員として、ブレーブスからデビッド・カーペンターとチャセン・シュリーブの2人のリリーフ投手を獲得しました。開幕までまだ数か月あり、まだ補強に動くと思いますが年明けまでのニューヨーク・ヤンキースの2015年の補強、また開幕ロースターを予想したいと思います。
リリーフを中心に的確な補強。不安は先発投手陣の故障
投手の構成は以下の様に予想されます。
先発投手陣 SP1:田中将大(右) SP2:CC.サバシア(左) SP3:マイケル・ピネダ(右) SP4:ネイサン・イオバルディ(右) MIAからトレードで獲得
SP5:クリス・カプアーノ(左) リリーフ投手陣 Closer:デリン・ベタンセス(右) Setup:アンドリュー・ミラー(左) RP1:デビッド・カーペンター(右) ATLからトレードで獲得
RP2:アダム・ウォーレン(右) RP3:ジャスティン・ウィルソン(左) PITからトレードで獲得
RP4:エスミル・ロジャース(右) クリス・カプアーノはイバン・ノバが復帰した時点で、ロングリリーフ兼スポット先発要員になるのではないでしょうか。リリーフは、デリン・ベタンセスとアンドリュー・ミラーは確定的で、2013年にブレーブスでセットアップを務めたデビッド・カーペンターとパイレーツでセットアップを務めていたジャスティン・ウィルソンが、リリーフの7人に入ると予想されます。
*デビッド・カーペンター:2014年は61.0回で防御率3.54/WHIP1.26、2013年に65.2回で防御率1.78/WHIP0.99でセットアップをブレーブスで務める。持ち球はフォーシーム、スライダー、チェンジアップ。フォーシームは最速99マイル(159キロ)、平均で97マイル(156キロ)。奪三振率は2013年に10.14、2014年に9.89と高い。2015年は年俸調停1年目で予想年俸は110万ドル。FAまで残り3年。 また、アダム・ウォーレンとエスミル・ロジャースが加わることが有力視され、最後の1人の枠を、トレードで獲得したチャセン・シュリーブに、マイナーのジェイコブ・リンドグレーン、ホセ・
ラミレス、ブランデン・ピンダー、ダニー・ブラワらが争うと見られています。
*チャセン・シュリーブ:2014年にメジャーデビューし、12.1回で防御率0.73/奪三振15/WHIP1.05。持ち球はフォーシーム、チェンジアップ、スライダー。フォーシームの最速は95マイル、平均で93マイル。スライダーは基本的に縦変化。FAまで6年間チームがコントロールできます。 リリーフはデリン・ベタセス、アンドリュー・ミラーというメジャー屈指の奪三振率を誇る2人が8回、9回を担い、セットアップの経験のあるデビッド・カーペンターとジャスティン・ウィルソンがその前に控え、さらにアダム・ウォーレン、エスミル・ロジャースがいますので、とても充実した補強といえるのではないでしょうか。
ブルペンの補強はとてもうまくいっている一方で、先発投手陣は不安が多く、特に先発候補3人はいつ故障で離脱しておかしくないコンディションの為、状況次第では昨シーズンのブランドン・
マッカーシーのような投手の補強に動くことになる可能性はあるのではないでしょうか。現段階の補強では、基本的に先発には5回から6回を試合を壊さない程度に投げてもらい、後はリリーフで乗り切るというのが理想ではないかと思います。
故障者が出た場合もユーティリティープレイヤーがカバー
野手の構成は以下の様に予想されます。
捕手:ブライアン・マッキャン/J.R.マーフィー 一塁:マーク・テシェイラ 二塁:ロバート・レフスナイダー 三塁:チェイス・ヘッドリー 遊撃:ディディ・グレゴリウス/ブレンダン・ライアン 左翼:ブレット・ガードナー 中堅:ジャコビー・エルズベリー 右翼:カルロス・ベルトラン/クリス・ヤング 指名打者:アレックス・ロドリゲス/ギャレット・ジョーンズ 捕手はフランシスコ・セルベーリがトレードとなりましたので、J.R.マーフィーがブライアン・マッキャンのバックアップとなるのではないでしょうか。
また、一塁はマーク・テシェイラのバックアップとして、トレードで獲得したギャレット・ジョーンズとアレックス・ロドリゲスが控えになるのではないでしょうか。
二塁はプロスペクトのロバート・レフスナイダーが有力視されていますが、ヤンキースはマイナーで捕手以外のポジションを守ってきたユーティリティプレーヤーの
ホセ・ピレラ、マイナー契約の
コール・フィゲロア、ニック・ヌーナンあたりと争わせるのではないでしょうか。
ブレンダン・ライアンは、遊撃でディディ・グレゴリウスと併用されると同時に、二塁と三塁も守れるため、両方のポジションのバックアップとしての役割を果たすことになります。三塁はチェイス・ヘッドリーがレギュラーで、状態が良ければアレックス・ロドリゲスもバックアップとして起用されることもありそうです。
外野に関してはジャコビー・エルズベリー、ブレット・ガードナー、カルロス・ベルトランが基本的な構成となりますが、ベルトランは体調面で不安がありますので、クリス・ヤングの出場機会が増えると予想され、場合によってはギャレット・ジョーンズもライトで出場することもありそうです。また、複数のポジションをカバーできる選手を複数抱えることで、故障者が出た場合の大幅な戦力低下を防ぐことができる顔ぶれとなっています。
打線の得点力アップは、現在のメンバーが2014年よりパフォーマンスが向上することに期待したいです。ただ、体調が万全ではない選手も少なくありませんので、この点は不安材料となりそうです。年俸総額を大幅に増やさずに、守備とブルペンを強化し、ロースターを若返らせるという一貫した方針で、地味ながらも戦力を整えてきたヤンキースです。
先発投手陣に不安はありますが、2014年シーズン開幕時よりもロースターのバランスは良くなったように見受けられますので、2015年は先発投手陣とベテランの野手が健康でいられるかどうかが、重要なポイントとなりそうです。
著者PROFILE 1950年代生まれ。現役を引退後、MLBスカウトに転身。全米だけではなく日本球界にも太いパイプを築き、スカウティング活動に余念がない。