いまや投手の打撃は問題外にされている。メジャー・リーグではア・リーグ、日本ではパ・リーグがDHを採用し、投手を打線のラインアップとは考えてない。最近は捕手にも打撃より守りを優先させる傾向が目立ち、捕手の強打者が少なくなっているのが実情である。捕手に強打者は必要ないのであろうか。(記録は4月18日現在) 
強肩とインサイドワークの良さには定評のある小林誠司。課題の打撃力がアップすれば日本を代表する捕手になれる素材であるのは間違いない
規定打席に届かない現代の主戦捕手たち
昨年のプロ野球において捕手で規定打席に達していたのはわずかに1人だけであった。
巨人の小林誠司である。小林が特別、強打者であったからではない。むしろ打てない打者であった。しかし
阿部慎之助が一塁に定着するようになって小林に代わる捕手がいなかったというのが実情と言ってもいい。
広陵高、同大、日本生命時代から注目されていた小林は2014年にドラフト1位で巨人入り。14年には110打数28安打で.255、15年にも177打数40安打で.226と阿部に続く控え捕手として貴重な存在であった。この2年間で本塁打も2本ずつ打っている。
特に目立ったのはその強肩ぶりで、14年の盗塁阻止率は41.7%で、阿部の27.3%を大きくしのいでいた。15年の阻止率も43.8%で、巨人全体の30.8%を大きく上回っているから阿部の後継者として大きな期待を集める存在となった。
16年は阿部が首を痛め、開幕に間に合わなくなった。捕手は小林に完全に任されることになった。阿部は5月末になってようやく一軍に復帰したが、捕手は小林で固定。しかし、打力の弱さは否めなかった。結局、小林は129試合に出場して打率.204、4ホーマー。セ・リーグの規定打席に達した27人の打者のうちワーストの27番目にランクされた。
捕手で100試合以上に出場したのは5人いたが、規定打席に届いたのは小林だけ。スタメンで試合には出ても終盤で代打と交代させられることが多いので、規定打席に届かない例が多いのである。(A表参照)
100試合以上に出場したのは小林のほかに、
DeNAの
戸柱恭孝(124試合)、
広島の
石原慶幸、
ヤクルトの
中村悠平(各106試合)、
中日の
杉山翔大(101試合)。この中で打席数が一番多かったのは戸柱の393であり、中村も378打席と規定打席には遠く及ばなかった。戸柱は124試合で393打席とは1試合につき3.2打席にしかならない計算だ。
一方のパ・リーグには規定打席に届いた捕手はいなかった。
ロッテの
田村龍弘は130試合(捕手では129試合)に出場したものの規定打席には13不足。現代のプロ野球では、スタメン捕手が試合の最後までマスクをかぶり続けることはすでに珍しいことにすらなりつつある。
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