今季は今後楽しみないい左腕がたくさんでてきた
プロ野球は交流戦に入った。力対技というか、例年どおり、パとセの特徴のある戦いは見物だし、ここで乗り遅れると、順位にも大きく影響するので、各球団の監督は神経質になっていると思うな。オレも監督時代、交流戦は重要な期間と位置づけていたし、シンプルに戦いながらも、最低でも5割で乗り切りたい……と最低ラインを設定していたからね。
そういう中、オレも気になっていたことが、今週号のテーマになるとのこと。それが左腕投手、サウスポーの躍進的傾向である。とにかく今季、左腕の先発投手の活躍がめざましい。それも若い投手の台頭が目立つ。どのチームも左腕の先発が多くいて、逆に少ないチームが苦労している現状。今年の特徴的な傾向といえるやろね。
オレはいつもスポーツ新聞をスミからスミまでチェックする(もちろん一般紙も)。ほんの数行の情報も読み過ごすことなく、球界の動きを頭に入れているが、その中で選手の全成績が掲載された表を見て、注目選手の動向を探っているのだが、この表の中にも驚くべき偏りを発見することができる。
例えばパ・リーグだが、打撃成績の上位10傑を見れば一目瞭然。とにかく左打者ばかりが並んでいる。右打者でがんばっているのは
内川聖一だけ。あとは左打者だらけ。それを裏付けるように、今度は投手成績を見ると、左腕投手の名が極端に少ない。
和田毅、
菊池雄星くらいか。
これで分かるように、好調な左腕投手がいない分、左打者が有利に戦っていることが分かるのだ。パはまさに左打者天国……。その裏返しで、左腕投手にとっては地獄のシーズンともいえる。
それがセ・リーグでは趣を変える。こちらは左打者で打撃成績の上位にいる人数が少なく、上のほうは右打者がズラリと並ぶ。左打者が少ない理由はパ・リーグとは正反対で、左腕投手がいいからではないか。投手成績をみれば、それは頷けると思うが、
菅野智之は別格として、そこから左腕投手の名前がきれいに並んでいる。セもパも例年にない偏りのデータが実に興味深い。やはりセのサウスポーがブレークしている……ということが実証されているということやろな。
阪神の
岩貞祐太、
DeNAの
石田健大、
今永昇太、
巨人の
田口麗斗、
今村信貴などルーキーやプロ2、3年目の若手が素晴らしい投球を続けている。これはホンマ、見ていて新鮮だし、中身も十分伴っている。それに外国人投手の
広島・ジョンソンが入り、防御率がいいのも分かる内容を続けているからね。全員に共通するのが球に力があり、キレる球を投げることができる。スピードもそれなりにあり、コントロールも四球で崩れることがないときているから、これは左打者が攻略するのは難しい。正直、そう感じるよね。
現役時代は力のある左腕に対しても苦手意識はなかった

オレの中でエース左腕といえば井川慶やな。1年間ローテを守れるし、何より精神的にタフやし粘れる投手やった。今季はそういう期待が持てる左腕がたくさん出てきたな
オレは現役時代、ホンマ、左投手が好きで、好きで仕方なかった。オレのバッティングの特徴というのか、インコースが好きだったから、左投手がクロス気味に投げてくる内角球を、うまく打っていたと思うよ(自画自賛?)。まあ、オレの理想の打球はインコースの球をファウルにしないで三塁線を破る当たりなんよ。普通に打てばファウルになるコースを、うまく腕をたたんで、それもライナー性の打球を打つこと。これができているときはホンマ、調子がいいと感じていたからね。
そもそもプロ初本塁打も左腕投手からやもんな。新浦(壽夫)さんから打ってんやけど、当時はそれほど力のある左腕はそうはいなかった……という記憶しかないわな。そんな中で広島の
大野豊さん、
川口和久さん、
中日の
今中慎二、
山本昌とかは好投手で、いつもしのぎを削っていた。でもオレ自身、それほど苦手意識はなかったわな。とにかく左の本格派が好きで、逆にかわされる投手は苦手にしていた。その代表的な左腕が
ヤクルトの
梶間健一さんやったかな。うまく投げられた……という印象しかなくて、力だけではない、テクニックでも抑えられるというタイプ。正直、当たりたくない相手やったし、チーム自体、梶間さんを苦手にしていたもんな。阪神キラーと呼ばれた代表的な投手やった。
昔に比べ、いまは左腕投手の絶対数は確実に増えている。それこそ先発ローテーションに4人くらいの左腕の先発がいるチームもあり、左腕王国と呼ばれる。左打者にいい選手が多い球界だけに、この王国はなかなかの強みを持つし、チームにとっては大きなアドバンテージになっている。そういうサウスポーで思い出すのは監督時代、エースとして投げてくれた井川慶やろね。2003年、星野さんが監督のとき、オレはコーチやったけど、井川はシーズン20勝。優勝に大きく貢献してくれたし、04年にオレが監督になってからも、井川はエースの座を守り続けたよ。開幕投手を決めるのも簡単。井川に任せる。それほどの投手やったよね。
何が素晴らしかったか……。オレは監督目線で考えるが、まず1年間、ローテーションを守れるし、シーズン200イニング以上を投げる。故障に強かったということもあるが、精神的にもタフやったよね。マイペースのように映るけど、マウンドに向かえば、闘争心を出し、打者に向かっていった。それも粘りがあり、必ず試合を作れる先発やった。オレの記憶では1年間で、5回までにKOをされ、マウンドを降りたのは1回だけやった。
そんな左腕エースがローテーションの軸にいることだけで、チームには安心感があった。ストレート、スライダー、チェンジアップと球種は少なかったけど、サウスポーの利点、有利さを球の勢いに上乗せして、投げ続けてくれた。最近ではこの井川やろな。エース左腕と呼べるのは。いま、ブレークする若きサウスポーたちが、どう伸びていくのか。これは楽しみやで。(デイリースポーツ評論家)
PROFILE おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年に
オリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球評論家として精力的に活動している。