
現役時代は同世代の同じ二塁手として辻監督[写真中央]のことをオレは意識していたよ。その監督が優勝を勝ち取った。しかも選手たちが辻監督の現役時代と同じように自分の役割をしっかりこなしての優勝となったわ/写真=BBM
本庶先生のノーベル賞受賞と大谷の手術成功はうれしかった
ビッグ・ニュースです!いきなりですが、ホンマ、うれしいニュースが届きました。日本中が沸き返ったと思う。エッ、何の話? って、ノーベル賞やんか。
声が裏返るほど、大喜びのオレやけど、皆さんは、ナンデ? と思われるかもしれませんね。オレとノーベル賞……。でも実は……って話があるわけですわ。医学生理学でノーベル賞に輝いた本庶佑先生ですが、オレの後援会の会長をやってもらっているわけ。2004年、
阪神の監督になったとき、発足となった「メンバー80・岡田会」という後援会です。政界・財界にも会に入ってくれる人が多くいて、それをまとめてくれる会長として、本庶先生がいるのです。
阪神ファンの先生とは、オフのゴルフコンペで同じ組を回り、ホンマ、お世話になりっ放し。監督を辞めてからも、後援会は存続し、今も定期的にお会いすることがある。とても穏やかな方、やさしさにあふれた先生です。オレは医学のことなど、難しいことは分からないけど、随分前に、ノーベル賞に選ばれて当然の人物だ、という話を周囲から聞いていたのを思い出す。
そして、ついにそのときがきた!! 早くお祝いをしたいのですが、まずはこの場を借りて「先生、おめでとうございます」。次に会うのが楽しみです。
そういうニュースとともに、次はアメリカから大谷(
大谷翔平)の右ヒジ手術成功の報が。これまたよかった。順調なら、来年の開幕には、打者として間に合うとか。投手としては無理だが、バッター大谷のさらなる進化が大いに楽しみよね。
オレはもともと、打者と投手のどちらか……という選択なら、打者で行くべき、という見方をしてきた。それが証明された今季の活躍。1年目からホームラン20本越えよ(22本塁打)。それも当初は二刀流の中での数字やから、ホンマ、大谷の潜在能力はすさまじいばかり。仮にこの1年、バッターに専念していたら30本以上の本塁打を打ったやろな。これを基準に考えれば、来年、体調に問題なく、打者中心にやれば、かなりの数字を残すのは間違いない。
でも、焦ってはダメ。それだけが気になる。大谷には「時間」がある。まだ24歳よ。時間はタップリある。焦らずに調整すればいい。無限の可能性は、しぼむことはない。
同世代の辻監督が優勝。攻めた攻撃野球やった
ワールド・ワイドな話題から、国内のプロ野球に話を移すと、パ・リーグで
西武が久しぶりのリーグ優勝を決めた。
ソフトバンクに追いつめられた時期もあったけど、オレの予想どおり、西武が開幕から首位を守り切っての完全優勝。ホンマ、お見事でした。
Vに導いた辻(
辻発彦)監督はオレより1歳下。まあ、同じ世代で現役時代も戦った。1985年の日本シリーズは阪神対西武。当時の西武は、ホンマ強かった。抜け目ないというか、バランスのとれたチームやった。特に投手陣がよくて、先発の松沼兄弟(
松沼博久、
松沼雅之)、高橋直(
高橋直樹)さん、
渡辺久信らの若手と、
郭泰源がいて、それは強力スタッフやった。
打線も石毛(
石毛宏典)、秋山(
秋山幸二)、スティーブ、ベテランの
大田卓司さんと穴のない並び。その中に辻監督がいた。阪神は岡田-平田(
平田勝男)、西武は辻-石毛の二遊間コンビで、やっぱり気になる存在やったな。辻監督は、社会人のときは、バットを長く持って、長打があるバッターやったと聞いたことがある。それがプロに入り、自分のスタイルを考え、バットを短く持ち、しぶとさを持ち味にした形に変えた。それが確立され、チームの中で欠くことのできないプレーヤーになった。攻めも守りも走塁も、ホンマ、玄人好みするシブいプレーが売りで「同世代」のオレは気になる存在として見ていたわ。
そんな辻監督やから、チームを任され、きっと渋いチームを作ってくれるやろう……と思っていたら、今季のライオンズはどうよ。打って、打って、打ちまくる!! イメージと違ったチームにして、まさに攻めに攻めての優勝となったのである。
阪神の85年がそうだったし、近鉄の「いてまえ打線」もそう。強力打線を前面に押し出し、ファンにはたまらない戦いを続けた。辻監督は迷うことなく、この強さを武器にした。投手陣が弱くても、打線が何とかする。打線で何とかできる。こう割り切れたら、ひたすレールの上を走るだけ。投手陣も引きずられるように、好循環が生まれる。以前にも書いたが、阪神でくすぶっていた榎田(
榎田大樹)がトレードで移って、先発として11勝(4敗)よ。これこそが強力打線の恩恵よ。我慢して投げていたら必ず打線が何とかしてくれる。そういう意識を持つことで、投手が成長していく。阪神も近鉄も、そして今シーズンの西武も、同じようなスタイルで優勝したわけよね。
四番・山川(
山川穂高)を筆頭に20本、30本、40本とホームランを打てるバッターがたくさんいる。上位から下位まで、相手投手は気の抜けない打線やから、ホンマ、しんどいと思うな。それでいて、各選手が自分の役割を理解している。辻監督の現役時代がそうであったように、役割をこなせる選手が多くいること。これがチーム力として跳ね返ってくる。そういう意味では、今年の西武は、シナリオどおりにゴールを迎えたといっていいのではないかな。
ということでセは
広島、パは西武の優勝となり、あとはセ・リーグの3位争い。この号が書店に並ぶころには、セの3位も決まっている。果たして
巨人か
DeNAか。ミラクルが起きての阪神はなくなったが、いよいよ今年のプロ野球がクライマックスを迎えるのである。(デイリースポーツ評論家)
PROFILE 岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年に
オリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球解説者として精力的に活動している。