
野球日本代表の金メダル獲得の条件は、稲葉監督[中央]の判断力とクローザーをどうするのかに掛かっていると思うよ[写真=榎本郁也]
五輪の試合を毎日何時間も座って応援の日々よ
1年遅れで実現した「2020東京五輪」。やっぱり世界規模の戦いは面白い。開幕してからずっとテレビを見っ放しよ。スポーツ観戦大好き人間だから、1日何時間、テレビの前に座っても、飽きない。この生活が閉幕まで続く。ウ〜〜ン、あらためて幸せを感じるのである。
オリンピックの前半戦、オレが感動したのは何と言っても女子ソフトボールや。同じ野球という視点から考えても、ソフトボールは面白い。独特のルールがあって、それを踏まえての戦術が存在する。ベンチワークはホンマ、重要なんよね。用兵しかりで、それらをすべて結果につなげて、日本が金メダル!! おめでとうございます。
オレも昔、ソフトボールの打席に立ったことがある。遊びの一環だったけど、そのスピードに驚いた。体感では150キロといったところよ。それをバンバン投げる。しかも39歳の上野(由岐子)選手がやってのける。アメリカとの決戦。それは見事なピッチングであった。それがあって、チームに奇跡的なプレーが飛び出す。スポーツの世界のあるあるなんよね。
ピンチを背負って、強い打球が三塁を襲った。ボールが三塁手のグラブの下、手首のところに当たり方向を変えた。普通ならレフトに抜けている。それをショートが直接捕球したのだ。空中で起きた神がかりなプレーこそ感動NO.1。オレも長い間、野球をやってきたが、プロ野球でもお目にかかれないシーンやった。
続いて柔道やね。特に男子柔道。スタートから4階級続けての金メダル。戦いっぷりが見事過ぎる。その中でも大野(将平)選手よ。柔の道を極めた姿は、ホンマ、立派やった。日本柔道の真の強さを世界に示した。ありがとう……と伝えたいよね。
そして、いよいよ侍ジャパンの登場よ。7月28日、ドミニカ共和国を相手にしての初戦。先に結果を書くが、9回裏に逆転サヨナラ勝ち。これは大きいことよ。とにかく結果がすべてやし、白星発進はよかった。ただ反省材料もあったし、相手に助けられた……という印象が強く残ったよね。
本当のクローザーは誰にする? 稲葉監督の判断に注目
ドミニカ共和国がちゃんとした野球をやっとけば負けていた、とオレは思っている。例えば9回表一死一、三塁の場面でライトに長打が出た。オレは思わず声が出た。これは一塁走者もかえってくる……と。ところがランナーは三塁に止まっていた。ダメ押しになっていたかもしれない失点を免れた。さらにその裏よ。一死から柳田(
柳田悠岐)が放った打球は一塁左へのゴロ。ア……と見ていたら、投手がベースカバーに入っておらず、一塁ベースはがら空き。内野安打の記録になったが、これは明らかにドミニカ共和国のミス。普通にプレーしていたら、二死になっていただろうし、サヨナラ勝ちは幻になっていただろう。
でも、こういうことが起きるのがオリンピックという舞台なんやろうな。相手にもらったチャンスをそのあとに生かした日本の攻撃はやはり迫力があったし、それこそが日本の底力。これをオレは称えたいけど、日本にも実はミスと呼べる局面があった。それは1点に迫った8回裏。一死二塁で吉田(
吉田正尚)がレフト前にヒットを放った。このとき、三塁コーチが手を回すのが見えた。エッ! と声が出た。打球の速さ、守備位置、さらに打順の巡り。すべてを考えれば、これは三塁ストップであり、一死一、三塁として四番に託す。こういう形にすべき場面やったと思うよね。
ドミニカのミスを他山の石として、侍ジャパンにはあらためて一つひとつのプレーを見つめ直してほしいし、初戦を終えて、日本も短期決戦の戦い方を再確認できたのではないか。ソフトボールもそうであったが、やっぱり野球というのは守りからなんよ。投手も含めたディフェンスがいかに大切か。ソフトボールがそれを示していたし、侍ジャパンもそれを基軸に戦っていくことよ。
オレが今回キーマンとして挙げた
山本由伸が先発し、結果を残した。今後、勝ち進めば、山本を軸に編成されるだろうが、ポイントは継投になる。ドミニカ戦では青柳(
青柳晃洋)、栗林(
栗林良吏)が苦しんだ。初めての経験だから……という声があるだろうけど、それは関係ない。あくまで結果を求められる立場だし、今後は起用法が見直されることになるかもしれない。
特にストッパーとして期待がかかる栗林がどう立て直すか。ここが金メダルへのポイントになる。これから先、ラクなケームになることはないだろう。先発からセットアッパー、そしてクローザーにつないでいく継投が侍ジャパンの生命線と言えるのだが、クローザーが不安定なままなら、日本の方程式は崩れかねない。
このまま栗林に任せるのか、それとも平良(
平良海馬)、山崎(
山崎康晃)をそのポジションに持っていくのか。ホンマ稲葉(
稲葉篤紀)監督の判断に注目が集まる。
情報が少なく、データがそろわない中、まずはどこまで自分たちの野球を貫けるか。これが重要で、だからこそ、ベンチがドシッと構えて、決して慌てないこと。オレは力的にも日本が金メダルに輝く可能性は極めて高いと考えている。しかし、ひとたびリズムを崩すと、取り返しのつかないことになるのも国際大会の怖さよ。サヨナラ勝ちした勢いとブレないリズムを持って、侍ジャパンよ、ドシッといこうぜ! (デイリースポーツ評論家)
PROFILE 岡田彰布/おかだ・あきのぶ●1957年11月25日生まれ。大阪府出身。北陽高では1年夏の甲子園に出場し、早大では東京六大学リーグ歴代1位の打率(.379)と打点(81)をマーク。80年ドラフト1位で
阪神に入団。1年目からレギュラーとして新人王を獲得。21年ぶりのリーグ優勝、日本一を達成した85年は五番打者としてベストナイン、ゴールデングラブ賞。94年に
オリックスへ移籍し、95年限りで現役引退。通算1639試合、打率.277、247本塁打、836打点。オリックスで2年間指導の後、98年に阪神復帰。二軍監督などを経て、04年から08年まで監督を務め、05年はリーグ優勝に導いた。09年から12年はオリックスの監督として指揮を執り、13年からは野球解説者として精力的に活動している。