月に向かってホームランを打ち、ベンチに投げキス。日本シリーズの大騒動を経て、両リーグ1000安打。それでも寂しさが…。 文=大内隆雄、写真=BBM パ・リーグで287本、セ・リーグで199本とホームランを打ちまくった本物のロングヒッターだった/78年
大杉勝男の名前から、真っ先に思い出されるのは、
ヤクルト時代の“珍プレー”である。大洋の
屋鋪要がその快足で売り出したころだから79年のことだったと思う。神宮での対大洋(現
DeNA)戦、屋鋪は代走で一塁に立った。ここで打者は、一塁側にファウルフライを打ち上げた。大杉はこれを懸命に追い、ナイスキャッチ。
「ヨシッ!」のポーズで、アウトを確認するようにして、後ろを振り返った。ン?一塁塁上に屋鋪の姿がない!もう、一、二塁間の半分以上のところを走っている。大杉はポカンとした表情で、状況をつかめない様子。屋鋪は楽々と二塁を奪った。
平凡な一邪飛で、タッチアップして二塁を奪った走者を見たのは初めてだった。その後も、見ていない。屋鋪の動物的なカンと脚力に心底驚いてしまった。
数年後の84年、横浜球場で、評論家となっていた大杉(83年で現役引退)と雑談する機会があった。大洋の本拠地で屋鋪の姿も見えたので、筆者は、先の珍プレーを思い出し、大杉にそのことを聞いてみた。すると
「ワッハッハ。覚えてますよ。まあ、あんなこともありますよ」と大杉は、うれしそうな表情さえ浮かべて振り返った。こちらに悪意はもちろんないのだが、少々マズッたかな、の思いもあったので、この答えにホッとした。
実はこのとき、大杉に会ったのだからとっておきの“お土産話”をしようと思っていたのだが、いいタイミングだと披露してみた・・・
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