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プロ野球を支える仕事人

<TEAM STAFF CLOSE UP>ファーム 育成付・増田達至(西武)「まずは2年間、一生懸命、勉強に打ち込んでいきます」

 

正確に言えばこれからプロ野球を支える仕事人になろうとしている立場だ。現役時代はライオンズ一筋で通算194セーブ、109ホールドを挙げた名リリーバー。昨年限りで現役を引退したが、現在は思い描く将来に向けて一歩一歩、歩み始めている。
取材・文=小林光男 写真=BBM

ファーム 育成付・増田達至


大学の研究室で勉強


 引退試合から1年──。増田達至氏の次に進むべき道が決まった。

「外部で勉強することが決まりました。来年4月から学生になります」

 ユニフォームを脱ぐ決断をした際、球団からはいくつかの選択肢を与えられた。その中に指導者の道もあったが、それは時期尚早だと感じていた。

「僕は投手としての経験はありますが、知識はまだないと思っています。もし、指導者になっても自分の経験だけで選手にアドバイスを送って説得力があるのかな、と。自分の感覚だけで話しても、選手にうまく伝わるか疑問に思います。それよりもしっかり勉強して、知識を蓄え、選手に合ったアドバイスを送ることができる指導者になりたいと思いました」

 引退時には2025年度の入試は終わっていたので、まずは大学の研究室に通って入試に備えた。

「そこで授業を受けて野球の知識を得ました。まずは野球の歴史から始まりました。今まで聞いたことがないような話だったので、非常に面白かったです」

 もちろん、野球の技術に関する授業もあった。プロの第一線で長く活躍してきた増田氏にとっても、興味深い内容が多かったという。

「現役のときに知っておけば良かったなという話も多かったです(笑)。そういったことに重点を置いて取り組むことがなかったので。例えば投げる際に(右投手の場合)左肩をなるべく早く開かないように投げますが、その際に左脇に意識を置いてホームの方向に向かっていく、と。スピードが出る投手に共通しているのは、やっぱりギリギリまで捕手のほうにまで体が行けて、最後にクルッと回って投げている。その分、体に負荷がかかってしまうんですけど、そういったイメージはなかったので現役時代に試しておけば良かったと思いました。そういったことが多かったですね」

外から野球を見て気付き


 研究室での授業以外でもプラスになる学びが多かった。球団での肩書きは「ファーム・育成付」。春季キャンプでは一軍に帯同したが、その際に投手のブルペン投球をじっくりと観察した。

「現役のときはマウンドからの景色しか見たことがなかったんですけど、キャンプでは捕手の後ろからだったので、すごく新鮮でした。あらためて、『勝てる投手はこういうボールを投げる』と気づかされましたね」

 増田氏が感じた、いい投手の共通点とは何だったのか。

「ホームベース上でもスピードが衰えない。初速と終速の差がなく、『そりゃ打者もボールが速く感じるよな』と実感しました。それに今井(今井達也)とかもそうですけど、『力をほとんど入れなくても、こんなに強いボールを投げられるんだ』と。特にキャンプのときだったので、首脳陣にアピールしたい投手は『速い球を投げたい』と思って、投げる前から体に力が入ってしまっているような感じでした。でも、それでは捕手が捕球するときにはボールの威力が弱くなってしまう。『どれだけリラックスして投げられるかが、すごく重要だ』ということもあらためて感じました」

 シーズン中は頻繁にベルーナドームを訪れて、ライオンズの試合を観戦。第三者視点で野球を見ることで勉強になったことも多々ある。

「ユニフォームを着ているときは自分のことばかり考えていたんですけど、今は全体を見ているような感じです。例えばひと呼吸を置くために、僕だったらこのタイミングでマウンドに行くなぁとか。僕自身もマウンド上でいっぱいいっぱいになってしまっていたときは、投球テンポが同じようになっていたので。テンポを変えるために、捕手がマウンドに行ったほうがいいのではと考えたりしますね。それと、球数がかさんでいるので、長いシーズンを考えたら交代したほうがいいのかな、と。試合を見ていて、そういったことを感じています」

現役時代はリリーバーとしてチームを何度も勝利に導いた


 増田氏が研究テーマに掲げているのは『投手起用』だ。

「僕の中でも一番、そこが難しいところだと思っているので。投手の起用法が勝敗を左右することが多いですから。もし、ユニフォームを着たときに、ある程度の知識を持っておけば投手起用で成功する確率を上げることができるはず。今は、そのテーマで勉強を進めていきたいと考えています」

背中を押す指導者に


 現時点では、どのような指導者になりたいか、理想像を頭に思い描いているのだろうか。

「しっかりとコミュニケーションを取って、困ったときに手助けしてあげられる指導者になりたいです。僕は現役晩年、豊田さん(豊田清一軍投手チーフコーチ)に助けてもらいました。年齢を重ねて、『もう少しこういうふうにやっていったほうがいいんじゃないか』と。いろいろな動きであったり、体の作り方であったり。すごく背中を押してもらった感じでした」

 一人ひとりの特徴を把握して、個人個人に合ったアドバイスを送れるようになることも目標だ。それこそ、特殊な投法のアンダースローにも的確な助言をして、成長を促せるように。

「自分一人の知識では限界があります。勉強する場では野球に特化した生徒が多く来て、アンダースローの研究をしている人も多分いると思いますから。そういった人たちからも、いろいろ知識を吸収できればと思います」

 校舎は東京から離れた場所にあるため、来年からは現地で家を借りて平日は家族と離れて過ごすことになる。

「不安もありますけどね。でも、自分の好きな分野の勉強をできるので、頑張っていきたいです。それに僕一人の力ではなくて、周りの方に助けてもらっていますから。実際に入学試験でも多くの方のサポートを受けたので。まずは2年間、一生懸命、勉強に打ち込んでいきます」

 2年後、卒業を迎えた際、また新たな勉強欲が湧いて学びの時間を続けていくかもしれない。未来は不確定だが、何らかの形で野球の知識をアップデートした増田氏がライオンズの力になることは確かだ。

PROFILE
ますだ・たつし●1988年4月23日生まれ。兵庫県出身。柳学園高から福井工大、NTT西日本を経て2013年にドラフト1位で西武入団。15年に42ホールドポイントで最優秀中継ぎ、20年に33セーブで最多セーブに輝く。22年には史上8人目(日米通算含む)の100セーブ&100ホールドを達成。24年限りで現役引退。通算成績は560試合、31勝40敗194セーブ、109ホールド、防御率3.03。
舞台裏の仕事人

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野球界には欠かせない裏方さんを紹介する連載。

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