報徳学園の2回戦は3月26日。前日の1回戦、大阪桐蔭の2年生・
根尾昂が遊撃手で躍動する姿を見て、刺激を受けた同級生がいる。名門・報徳学園で、1年春からショートを任されている
小園海斗だ。
「彼はすごいので。自分はまだまだなので、負けないようにしたい」
小園は「日本一のショート」を目指している。その原点となっているのが小学校時代、
ヤクルト・
山田哲人も在籍した宝塚リトルだ。
「作コーチが野球選手としての僕を作ってくれました。永遠にノックを受けたり、併殺プレーのスピード……。挙げたら、キリがありません」
最も記憶に残る言葉がある。「甲子園へ行ったら、土と芝生の切れ目で守れ!」。その意図を説明する。
「良いショートに見える、と。定位置が後ろならば、守備範囲も広がりますから、アウトになる率も上がる」
2年春にして、自身初の甲子園。ポジションに就く際は、作コーチからの教えを忠実に守っている。尊敬する選手は山田だが、理想のプレースタイルは守りならソフトバンク・
今宮健太、打撃ならアストロズ・
青木宣親。50メートル5秒9、遠投105メートルと、潜在能力抜群の好選手だ。
多治見との1回戦では右越え本塁打。記念のホームランボールは密かにバッグに忍ばせており、小園のお守りとなっている。前橋育英との2回戦では右前安打の後、投球前に二盗を決める積極走塁を見せ、8強進出に貢献。ただ、イレギュラーバウンドもあったが、初失策を記録し「対応力が足りなかった。集中していきたい」と反省も忘れなかった。
中学時代はオール枚方ボーイズに在籍。秀岳館(鍛治舍巧監督は同チームの元監督)には同チーム出身の選手が多くおり、U-15侍ジャパンの一員だった小園も県外の強豪校から誘いがあったという。しかし、ブレなかった。
「報徳は昔から強くて、家の近所。いつも学校前の道を通り、小さいころからあこがれの目で、見ていました」
初志貫徹で地元の強豪校へ進学したわけだが、監督の影響も大きかった。小園に限らず、報徳ナインは今センバツへかける意気込みが強い。永田裕治監督が今大会限りで勇退するからだ。つまり、負ければ終わり。
「1年春から使っていただいて、良い思いをさせてもらった。1日でも長く甲子園で野球をやり、日本一の監督にしたいと思います」
大谷智久(現
ロッテ)がエースだった2002年以来、15年ぶりのセンバツ制覇まで、あと3勝。指揮官を胴上げするために一戦必勝で戦い、自らも「日本一のショート」となる。
文=岡本朋祐 写真=BBM