
春夏通じて初の準々決勝に挑んだ盛岡大付だが、履正社の前に1対8と完敗
甲子園で優勝経験のあるベテラン指揮官の言葉を思い出す。
「準々決勝以降が、本当の勝負。それまでとは世界が変わりますから」
頂点まであと3勝。センバツならば、2試合を勝ち上がってきた8校には当然、高いチーム力がある。だからこそ、「8強」「ベスト8」と言われ、野球部の歴史上でもステータス、箔が付くのである。
今春、その�猜畢瓩鬚茲Δ笋�打ち破ったのが盛岡大付(岩手)だった。センバツは今大会で4回目、夏選手権は9回出場の甲子園常連校である。
だが、同校の歴史をひも解いてみれば、甲子園は苦難の連続だった。1995年夏の初出場から2012年夏まで、初戦9連敗を喫している。
ついに長い
トンネルを抜け出したのは2013年春。2年生・
松本裕樹(現
ソフトバンク)を擁し、悲願の甲子園初勝利を挙げた。この1勝で�犲�縛�瓩�ら解き放たれたのか、14年夏も初戦突破を果たし、昨夏は初めて2勝を挙げて3回戦進出。
そして、2季連続出場となった今センバツは「先輩を超える8強」が合言葉だった。高岡商との1回戦は打撃戦を制し(10対9)、智弁学園との2回戦は左腕・
三浦瑞樹が1失点完投(5対1)。前年のセンバツ優勝校を撃破するという、価値ある初のベスト8だった。
準々決勝の相手は履正社。昨年10月の国体では6対10と力負け。
「打たれた印象しかない。ほとんど外野に運ばれた。技術は相手が上。ぶつかっていくしかない。特に準々決勝ですけど『舞台を考えるな』と言っています。甲子園を自分たちのグラウンドだと、思い切ってプレーしてほしい」(
関口清治監督)
4回まで両校ゼロ行進も、盛岡大付の先発・三浦瑞は5回表、味方の失策も絡み、打者1巡で5点を先制される。一方、打線は6回まで一人の走者も出せない、完全試合ペース。
場内もざわつき始めた7回裏、先頭・
植田拓が初球をたたくと、打球は左翼スタンドへ一直線。チーム初安打が、豪快な本塁打となった。
「初球から行こうと思った。絶対、完全試合はなくそう! と。これで勢いがつくかな? と思ったら、つかなかったのが残念です」
反撃もそこまで。終盤に突き放されて1対8で敗戦。ほろ苦い、初めての準々決勝の戦いを終えた。
「勝ち上がってくるチーム、大会の中で鍛えられてくるチームとの対戦。集中力の部分で少しのスキを見せると、一気に攻められてしまう。これがベスト8以上の試合」(関口監督)
やはり「頂点まで3勝」は、地力がないと、到達できない。ただ今回は、それを身に染みて感じられたこと自体が、大きな収穫だった。盛岡大付は一歩一歩、階段を上がっていく。
文=岡本朋祐 写真=BBM