
開幕戦で五番に入った西武・栗山は2回表にチャンスを拡大する二塁打を放つなど、4打数3安打をマーク
西武打線の五番に名を連ねたのは
栗山巧だった。
3月31日、札幌ドームで行われた
日本ハムとの開幕戦。
浅村栄斗、
中村剛也、
メヒアと大砲でクリーンアップを固めるかと思われたが、
辻発彦監督が三番・浅村、四番・中村の後に置いたのは高い出塁率を誇る男だった。「中村、メヒアの間に左打者を置きたい」と指揮官はその意図を語ったが、打線のつなぎを考えるとこれはベストのさい配であっただろう。現に栗山は0対0で迎えた2回表、四球で出塁した中村を一塁に置き、左翼へ二塁打を放ち無死二、三塁とチャンスを拡大して、2点の先制を呼び込んだ。背番号1は4打数3安打と結果を残し、8対1の大勝に貢献した。
思い出されるのは2002年の西武打線だ。
カブレラ、マクレーンと長打が期待できる助っ人がいたが、この年、指揮官に就任した
伊原春樹監督は開幕の
ロッテ戦(札幌ドーム)で四番・カブレラ、五番・
和田一浩、六番・マクレーンという打順を組んだ。
「このシーズンから和田は捕手から外野へコンバートして打撃に専念させたのだが、普通だったらカブレラ、マクレーンと大砲を並べたくなるところだろう。でも、それだと打〝線〟にならない。例えば無死でカブレラが打席に立つと、相手投手はホームランが怖いからボール球が多くなる。カブレラが我慢できれば四球で出塁する可能性が高くなる。そこで次打者がマクレーンだと作戦の立てようがない。しかし、和田だったらボールを当てるのは上手だし、何でもできる」
この打順が見事にハマった。15年前の開幕戦、相手先発のミンチーの前に西武打線はゴロの山を築き、4回まで1人のランナーも出せなかった。しかし、5回裏、先頭のカブレラが三塁内野安打で出塁すると、続く和田の打席でヒットエンドランを敢行。伊原監督の作戦は的中して、無死二、三塁からマクレーンが先制打を放った。これが奏功し、西武は3対2で勝利を収めた。
2002年、伊原西武は90勝を挙げ、リーグ優勝を達成。今年の西武は投手力に弱点がある。しかし、五番にポイントゲッターの栗山を置いた打線が機能すれば、ウィークポイントをカバーして、台風の目となるかもしれない。
文=小林光男 写真=小山真司