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2017ペナントレース/白球の行方

ヤクルト・鵜久森淳志の前の代打サヨナラ男は“死球王”

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代打サヨナラ満塁弾で喜びを爆発させる鵜久森



 神宮が大歓声に包まれた。

 4月2日、ヤクルトDeNA戦。4対4の同点で迎えた延長10回裏、一死満塁で打席に入ったのが代打・鵜久森淳志だった。済美高時代に2004年のセンバツ優勝、夏準優勝を導いたスラッガーだが、日本ハム入団後は伸び悩み、15年限りで解雇。トライアウトを受け、16年ヤクルトに入団した。

 初球、マウンドの須田幸太が投じた低めのストレートにバット一閃。打球はレフトスタンドに飛び込む、劇的な代打サヨナラ満塁ホームランだ。「やったろうと。(ヤクルトに)拾ってもらった恩返しをしたいという思いはあります」とお立ち台で声を弾ませた鵜久森。代打サヨナラ満塁弾は史上16人目。ヤクルトでは1982年岩下正明以来2人目となる。

〝先人〟の岩下は現在、横浜で「ステーキハウス岩下正明」を経営する。三菱重工横浜から80年ドラフト4位でヤクルトに入団した左打者で、82年は代打の切り札的存在となっていた。

 試合は4月6日の広島戦(神宮)だ。このときも一死満塁。マウンドには福士敬章が立っていた。岩下は好投を続けていた投手の梶間健一の代打で打席に入り、やはり「狙っていた」という初球のアウトコース低めのストレートを右中間スタンドに運んだ。

 実は4月6日は夫人の誕生日でもある。プロ初安打も含め、3打数3安打1四球、出塁率10割と〝愛妻家〟ぶりを発揮している。

 この82年、岩下はひとつ同年のリーグ最多記録をマークした。死球10個だ。レギュラーではなく、192打席での数字だからすごい。

「特攻精神ですね。ぶつかってでも塁に出たいという気持ちがありました。そうじゃなかったら代わった投手に申し訳ない。インサイドに来ても怖いと思ったことはありません」

 かつての取材で岩下は、語気を強め、そう話した。

 鵜久森と岩下。共通点は〝気合〟だ。

写真=高塩隆

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