
開幕3戦目に先発したルーキー・濵口。白星は得られなかったが、まずまずの投球だった
「変化球投手」──
DeNAのドラフト1位左腕、
濱口遥大に対してそんなイメージを抱いていた。神奈川大では相手打者の目線から〝止まる〟と評された落差あるチェンジアップを武器に、2年春に大学選手権準優勝、3年春は同4強入りに貢献している。とはいえ、大学時代に面白いように、バットに空を切らせた〝伝家の宝刀〟がそのままプロで通用するかといえば、そう簡単にはいかない。
春季キャンプでは納得のいくまでブルペンで投げ込み、ストレートのレベルアップにこだわった。
「チェンジアップよりはまず真っすぐの質を上げていかないと。僕のような緩急で勝負するタイプはストレートがこないと変化球も生きてこない」
4月2日、開幕3戦目の
ヤクルト戦(神宮)で12球団の新人最速で初先発のマウンドに立った濵口は、沖縄で磨いたストレートが走った。2点を失った初回、二死一塁から六番・
畠山和洋をこの日最速となる149㌔のインコース真っすぐで見逃し三振に斬って取った。
「指にかかって、ボール自体は良かった」
チェンジアップを生かすためのストレートが勝負球として機能。140㌔台後半の威力あるボールで強力ヤクルト打線を押し込む投球からは、「剛腕投手」の貫録すら漂っていた。なかでも3回一死、四番・
バレンティンから空振り三振を奪ったクロスファイアは自信になったことだろう。
5回を4失点(自責点2、勝敗つかず)のデビュー戦は、「2回以外すべて先頭打者を出塁させてしまった」と反省点もあった。三番・
山田哲人には、1打席目と同じチェンジアップを続けた2打席目にバックスクリーンに運ばれてしまった。
しかし、投げ込むボールに手応えを感じられたことは大きな収穫。昨年のドラフト1位・
今永昇太は6度目の先発となった5月にようやくプロ初勝利を手にした。案外、濱口のほうが早い時期に白星を手にするのかもしれない。
文=滝川和臣 写真=高塩隆