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“渦中”にいる早実・清宮幸太郎への「救いの手」

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センバツから調子の上がらない清宮。打撃修正に必死に取り組んでいる



「スランプ」とは、ごく一部の野球選手だけに使われる。つまり、超一流のレベルに到達していなければ、ただの「不振」という言葉だけで、片付けられてしまうからだ。

 早実・清宮幸太郎は、その〝渦中〟にいると言っていい。対外試合解禁以降、初の実戦となった3月8日の早大との練習試合(安部球場)で高校通算79号を放ってから、サク越えがない。

 本塁打が好不調のバロメーターとは言えない。だが、入学から2年間、あまりに順調に本塁打数を積み重ねてきた清宮からしてみれば、どうしても「スランプ」に映ってしまう。

 2回戦で敗退したセンバツから束の間、春季東京大会が開幕した。共栄学園高との4回戦では甲子園を通じ、公式戦5試合目にして「2017年初打点」。チャンスでは必ずと言っていいほど、勝負強さを発揮してきた清宮。到底、考えられない姿であったのだ。

「とらえたつもりでも詰まっている」。これが、清宮が考える「不振」の原因だ。練習では「ファウルでもいいから引っ張って、前でとらえることを意識している」と、ビデオでの研修も重ね、打撃修正へ必死だ。

 悩める主砲に対し早実・和泉実監督がついに〝救いの手〟を差し伸べた。

「自分の中で、いろいろ消化できていないところもあるが、彼の中では一つひとつ進んでいる。焦らせるつもりはない。何とかしよう、と努力する姿を見ている。チームが勝っていくことが彼の力になる。キャプテン(の負担)は大きい。チームの向かう方向性は決まっている。自分のことも見つめる時期に来ている」

 昨年7月26日の新チーム結成以来、清宮は常にチームの先頭に立ち、陣頭指揮を執ってきた。公式戦経験が浅かった同級生、後輩を鼓舞し「戦う姿勢」を浸透させた。その成果が昨秋の東京大会優勝であり、センバツ出場。甲子園の土を踏み、清宮も「自発的に動けるようになった。自分が引っ張られているような感じ」と、チーム力アップを感じていた。

 春は夏へのステップに過ぎない。最後の夏にピークを持ってくるためにも、一度、立ち止まってもいい。和泉監督の〝親心〟に、清宮は苦笑い。

「良い塩梅で、しっかりやりたいです」

 責任感の強い清宮は〝甘さ〟とは無縁。ただ、スランプの〝渦中〟で、少しは肩の荷が下りたように映った。4月15日の準々決勝(対駒大高)では、吹っ切れた背番号3が見られるに違いない。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎

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