現在は四番に座るが、あくまでもフォア・ザ・チームに徹する増田
主砲のファーストスイングが県大会、チーム初得点。幸先の良いスタートを切ったと言っていい。
横浜高のドラフト候補・
増田珠(しゅう)が4月15日、藤沢西高との神奈川県大会2回戦で「四番・中堅」で出場。1回表、二死二塁で1ボールから2球目となる内角スライダーを左前適時打。うまく腕をたたんでの、技ありの先制タイムリーであった。
「打点にこだわっているので。自分はホームランバッター(高校通算22本塁打)ではない。初回に打てたことは良かった」
試合は横浜高が7回
コールドで7対0の快勝。増田は第2打席以降、2つの四球を選んだが、6回先頭の三ゴロを悔やんだ。
「打ったヒットのことよりも、凡打のほうが……」
試合後は成功よりも失敗を振り返るあたり、芯の強さを感じる。
好きな選手は
ソフトバンク・
内川聖一。WBCでは代打の切り札として活躍し「ここで打ってほしい、というところで結果を出す。チャンスに強い」と、さらにあこがれを強くした。
長崎出身。県内でプレーする選択肢もあったが、全国屈指のレベルである神奈川で実力を磨き、卒業後のプロ入りを目指すために名門・横浜高に進学した背景がある。
1年夏からレギュラーで昨夏、初めて甲子園の土を踏んだ。しかし、2年秋は関東大会準々決勝敗退で、センバツ出場をあと一歩で逃した。
「(準々決勝で惜敗した)健大高崎が甲子園でプレーしているのを見て、本当は自分たちが立っている場所だったのに……。その悔しさを忘れずに練習してきました」
旧チームを通じ増田は不動の三番。だが、本来は四番の
万波中正(2年)の調子が上がってこないのと、1年生・
内海貴斗を「どうせ使うなら良いところで」と、三番でデビューさせたい平田徹監督の思惑により、増田が四番に。U15侍ジャパンでも経験のある打順も「4番目、という気持ちで立っている」と、あくまでフォア・ザ・チームで、特別な感情はないという。また、俊足、強肩外野手の増田だが、昨秋は救援マウンド(長崎シニアでは投手も兼務)にも上がるなど、野球センス抜群である。
保土ヶ谷球場のスタンドには
日本ハム、
阪神らのNPBスカウトが集結し、背番号8のプレーを見守った。
「昨年のように、先を見ながらの戦いはできない。一戦必勝です」
あくまで照準は夏。増田の高校ラストイヤーは始まったばかりだ。
文=岡本朋祐 写真=BBM