真っすぐな性格は、ときに実力発揮の妨げになる。結果が出ないと、悩み、苦しみ、もがく――。高い守備力を誇りながら打撃が振るわず、プロ入りから昨季までの6年間でレギュラーに定着できずにいた
駿太は、まさにそれだった。
誰よりも早く球場入りし、試合後もバットを振る。キャンプでも練習の虫となり、
福良淳一監督が“キャンプMVP”と評価するほどだ。が、結果につながらないと、焦りが生じて悪循環に。ロッカールームで隣に座る
西野真弘が、こんなことを言っていた。
「駿太はいつも落ち着かないんですよ。バットを持ってウロウロして。気が付くと、どこかに行って、バットを振っているんです」
本人に聞くと、もがいている姿が浮き上がってきた。
「気持ちが焦るというか……。とにかく(バットを)持っていたいんですよね」
悔しさが、そうさせる。2015年7月31日の
楽天戦(京セラドーム)では延長10回裏、二死二、三塁の好機で三振を喫してベンチに戻ると、人目を気にせず涙を流した。「人生で一番悔しい打席だった」。
だからこそ練習を繰り返す。そして周囲に意見を求める中で、あることに気が付いた。
「僕はキレイに打とうとし過ぎていた。クリーンヒットを狙い過ぎていたんです」
中でもチームメートの
小谷野栄一から聞いた打撃論が大きかったという。
「小谷野さんは(体勢が)崩されることも考えていると言うんです。そこで思ったんですよ。体勢が崩れても、想定していたら、自分の中で崩れたことにはならない。その形で打てばいい。ボテボテの内野安打でも、外野の前にポトリと落ちる『汚いヒット』でいいから」
今季、4月22日時点で16試合に出場し、14安打で打率.292。意識変革は結果に表れつつある。
「自分では好調とは思っていないんです。打力が上がったとも思っていないし。それに、極端な表現ですけど『どうせヒットは打てない』と開き直れているんですよね(笑)。オフに
DeNAの梶谷(
梶谷隆幸・DeNA)さんと一緒に自主トレをして痛感したんです。梶谷さんは、やるときはやるし、休むときは休む。気持ちのコントロールは大事だなって」
際どいコースをファウルにし、打てるボールを誘い込む。そして甘いボールがきたら逆方向に鋭く飛ばす――。凡打に終わった打席を見ても、決して無理なボールに手を出さない。打席内容の良さは、気持ちの余裕がもたらしていた。
気持ち1つで結果は変わる。人一倍の練習量が、ようやく実を結ぼうとしている。
文=鶴田成秀 写真=湯浅芳昭