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西武・田代将太郎“初本塁打”の陰にあった指揮官の我慢

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プロ6年目で初の一発を放った田代



「次の打席で何かきっかけをつかんでくれるんじゃないか、といつも思っていた」

 今年から西武を率いている辻発彦監督は2007年から3年間の中日二軍監督時代、若手選手に対して我慢の起用を続けたという。根底にあるのは選手の可能性を信じる心だ。もちろん、育成に主眼が置かれる二軍だから可能なこと。勝利が最優先の一軍では、そういったさい配はやはりやりづらい。

 しかし、初めて一軍の舞台でさい配を振るう辻監督に、そういった姿勢が垣間見えているように思っていた。例えば田代将太郎の起用だ。過去5年で一軍出場が33試合に過ぎなかった男だが、昨秋のキャンプで指揮官は能力の高さを買い、熱血指導を繰り返した。春季キャンプでもA班に連れて行き、オープン戦でも結果を残した田代を開幕スタメンに抜擢。しかし、チャンスをつかんだ背番号61はその後、打率1割前後と打てない日々が続く。

 それでも指揮官は田代の可能性を信じ、アドバイスを送ることをやめなかった。

 そして、迎えた4月23日の日本ハム戦(メットライフ)。7対3と4点リードで迎えた7回裏、二死一、二塁で途中出場の田代が打席へ。2ボール1ストライクからの4球目、谷元圭介の143キロ高め直球を引っぱたくと、打球は右中間席に飛び込む豪快なプロ第1号本塁打。チームの12対3の大勝に貢献した。

「打った瞬間は何が何だか分からなかった」と初々しい感想を述べた田代。本人の努力はもちろんだが、これで打撃開眼のきっかけをつかんでくれれば辻監督の我慢も実る。田代が今後、どのような成長曲線を描くか、指揮官はもとより、われわれも楽しみだ。

文=小林光男 写真=井田新輔

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