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昨年の日本一チームに何が起きているのか? 日本ハム・栗山監督「我慢」の船出
図らずもその不安は的中してしまった。
ペナント開幕直前に日本ハム・
栗山英樹監督にインタビュー(週刊ベースボール4月17日号に掲載)をする機会があった。そこで指揮官が何度も2017年シーズンの大きなキーワードに挙げていた言葉が「我慢」。これまで「夢は正夢」「爆ぜる」など前向きなワードを用いて自らも、そして周囲も鼓舞してきたが、なぜ今回はこの言葉を選んだのか。その背景を探っていくと2013年の苦い記憶がある。
監督就任1年目の2012年にいきなりリーグ優勝を果たすも、翌13年は一転して最下位に低迷……。その怖さが常に指揮官の脳裏にはある。一寸先は闇。今回のインタビューの中でも「あの13年があるから怖いんでしょうね、僕。だから優勝した次の年こそチームを一度壊すぐらい、攻めないといけない」と熱っぽく語っていた。
そんな思いとは裏腹にチームはキャンプからケガ人が続出して、指揮官の描いていた構想はいきなり軌道修正することになる。エースの
大谷翔平をはじめ、レギュラー候補でもあった
大田泰示、
淺間大基らも開幕に間に合わない中での船出に、インタビューでも「最初は我慢、我慢、我慢の日々が続くかもしれない」と話していた。図らずもその“予感”は的中し、栗山監督の56歳の誕生日でもあった4月26日の
ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)に敗れ、チームは12年ぶりの10連敗。借金は14にまでふくれ上がった。
連日「勝たせられない俺が悪い」と声を絞り出す指揮官。それでも、そのギラギラとした瞳は我慢の先にある逆襲の時だけを見据えている。現にケガで戦線離脱中のレギュラー陣に代わって結果を残している
松本剛、
清水優心、
横尾俊建らの奮闘、打撃覚醒中の
近藤健介の活躍など、苦境の中でも希望の光もある。さらに「岡(大海)や近藤は外野だけとは限らない」とかねてからサプライズ起用も示唆しており“栗山マジック”の真骨頂は、まだまだここから。
中田翔、大田泰示に加え、
マーティン、エスコバーの助っ人コンビなど、ケガ人も続々と戻ってくる5月反抗(もしかしたら大谷の復帰も)へ向けて──。大混戦のパ・リーグをさらに面白くするためにも、これまで何度もミラクルを起こしてきた王者の逆襲をいまは待ちたい。
文=松井進作 写真=井田新輔