
スカウトからも熱視線を浴びる慶大・岩見
神宮球場のネット裏席で試合を見守る
広島・
苑田聡彦スカウト統括部長は、“圧巻”の声を上げた。
「この春の5本、すべて見ていますけど、飛距離が違いますね。ウチの
エルドレッド? よく比較されるようですが岩見君、すごいですよ」
慶大・
岩見雅紀(4年・比叡山高)の驚愕の弾道は、スカウト歴約40年の「プロの目」から見ても、学生レベルを超越しているという。
今季11安打のうち、5本塁打(二塁打0、三塁打0)なのだから、恐るべき長打力である。フルスイングの代償として41打席で12三振を喫しているが、貢献度から言えば問題にはならない。
5月14日の明大1回戦。岩見は第1打席で中飛を打ち上げた。高々と舞い上がった打球は、なかなか落ちてこない。極端に言えば、ドーム球場ならば、天井に当たるのでないかと思えるほどだった。
第4打席では投手を強襲するライナー。あまりに痛烈な打球を避け切れず、そのまま、降板となってしまった。この日、待望の本塁打は出なかったが、1万3000人の観衆は和製大砲の打撃を十分、堪能できたのではないかと思う。
シーズン最多本塁打記録は法大・
田中彰(元広島ほか)が2004年秋に記録した7本。前カードの法大3回戦で2打席連続本塁打を放ち、俄然、注目度は高まっている。
試合後、報道陣に囲まれると岩見は言った。
「(意識するように)なるかな? と思ったら、別にないです(苦笑)。目指しているのは優勝。ホームランは『打てたらいいな』程度です」
しかし、本音も口にする。
「記録を意識しないと言えば、ウソになる。ペース的に圏内(慶大は残り、最大で3試合)にいることは分かっている。ただ、ホームランは狙わない。1日1本、大事なところで打ちたい」
卒業後の希望進路は「プロ1本」に絞った。ドラフトで指名を受けなければ、バットを置くという。つまり、一般の就職活動はしていないのだ。
「それくらいの覚悟でやらないと無理。父は『ぜいたくをしなければ、普通に生活するくらいの仕事はある』と……。両親も理解してくれまして、ありがたいです」
岩見は187㌢107㌔。最近のドラフト指名選手で、プロのタイプで言うならば、
ロッテ・
井上晴哉(中大-日本生命)、
西武・
山川穂高(富士大)が当てはまる。インパクトで言えば、将来的には西武・
中村剛也ほどの活躍も夢ではない。
試合終盤にベンチに下がるケースが多く、守り(左翼)にはやや不安が残る。しかしながら、DH制のパ・リーグならば、外国人と競争していけるだけのパンチ力がある。
記録更新まであと3本。1試合複数本の“おかわり”もあるだけに、慶大四番のバットから目が離せない。
写真=大賀章好