
ユーティリティープレーヤーとしてチームに欠かせない存在となっている水口
「背が小さいのはハンディだとまったく思っていません」
身長163センチ――12球団支配下選手の中で最小兵の
西武・
水口大地はそう言い切る。高校卒業後、独立リーグで腕を磨き、2013年に育成選手として西武に入団。15年シーズン途中に支配下登録を勝ち取った苦労人だが、現在は試合終盤の内野の守備固め、勝負どころでの代走、そして時に二塁でスタメン出場を果たして快打を飛ばす。猛者ぞろいのプロの世界で、あきらかに劣る体格をものともしないプレーは見ていて非常にすがすがしい。
マイナスもプラスに変える発想がある。例えば守る際、低い身長が利点となることもあるという。
「打球は上から〝点〟で見るより、より低いところから〝線〟で見たほうがいいと思うんです。だから、構えているときは〝より低く〟と思っています。それを意識してからイレギュラーも対応できるようになりました」
さらに、立派な体躯でなかったことが、自らをプロに導いてくれたという思いもある。
「大きい人に負けたくないという気持ちは人一倍強かったです。ウエートも誰にも負けないくらいやろう、と。もし180センチあったら練習もしていないでしょうし、僕、プロ野球選手になっていなかったと思います」
昨年、一軍出場は20試合に留まって、体力不足を実感。オフにウエート・トレーニングにそれまで以上に力を入れ、現在6㌔増の体重66㌔とパワーアップを果たした。周囲も「脱いだら、チームで一番すごい」とその肉体を賛美する。
「今年は送球も周囲から〝強くなったな〟と言ってもらえますし、ファームでも狙っていないのにホームランを1本、打ちました。力強くなりつつあるのは実感していますね」
精神的にも強くなった。5月20日の
ソフトバンク戦(メットライフ)。「九番・二塁」でスタメン出場した水口は6対2とリードした3回裏、一死一、二塁で打席へ。マウンドには代わったばかりの左腕・
飯田優也がいた。
「ボールの角度が初めて見る感じで、ウワッ、すごいな、と。びっくりしましたけど、ここで打ったらチームに貢献できると思ったら打席で楽しくなったんです。何も怖くなかった」
1ボール2ストライクからの4球目、内角低めの変化球に食らいついて右翼線にポトリと落とす適時二塁打。右足を浮かしたままバットの先で拾った打撃に、
辻発彦監督は漫画『ドカベン』で多くの秘打を見せた人気キャラになぞらえて「殿馬だよね」と感嘆した一打だった。
「とにかくチームの勝利のためにと思って毎日、プレーしています」
体は小さいが、その存在はますます大きくなっていく。
写真=高塩 隆