中谷(写真左)のインタビュー中に撮影をのぞき見していた北條(写真中央)。日ごろでも仲がいい。試合前の準備運動では前後で並んでいる
今週の週刊ベースボール6月19日号は「やっぱ好きやねん! タイガース」特集。その中で若手売出し中の
中谷将大外野手がインタビューに登場してくれた。インタビューの中で印象に残ったのは「昨年とはベンチの雰囲気が違います。みんなが最後まであきらめない空気がすごい」。これはチームメート全員が同じ方向と意識がないとできないことだ。その意味では、今年の
阪神は勝つための意識付ができていると言える。
インタビュー終了後、写真撮影を行っていた。何通りかのポーズのリクエストに「何でもやりますよお(笑)」と積極的に応えてくれた中谷。その最中、ある方向から不思議な視線が送られる。中谷もその視線にハッと気が付き、振り返ると、そこに
北條史也内野手が顔を半分だけ出しジーッと見ていた。しかも笑いながら……。
同じ時間帯に隣の部屋でほかの取材を受けていた北條。インタビューが先に終わり、隣に中谷がいることを聞きつけて見にきたのだ。しかもそれが写真撮影のタイミングと重なったのだ。依然としてニヤニヤ笑いながらも無言の北條。
「コラッ! 見るな!」と中谷。そして
「恥ずかしいやろ!(笑)……」。
この言葉にはズッコケた。普通なら「帰れ!」などの言葉だと思うのだが「恥ずかしいやろ」とは正直な男だと思った。北條は無言の笑顔のまま引き上げ、撮影再開。次のポーズで撮影をしていると、また、視線が……。北條が別のドアから、同じ笑顔で覗いていた。
「恥ずかしいやろ! やめろ、恥ずかしいわ!(笑)」。またまた同じ言葉を発した中谷。素直な気持ちがそのまま言葉が出てくるタイプ。彼が後輩からも愛され、先輩からも声を掛けられる理由が少し分かった気がした。そして今は打撃不振でスタメンに起用されることが少なくなった北條もまた、こういうイタズラができるとうことは、まだまだ心に余裕がある証拠だ。この2人の微笑ましいやりとりを見ただけでも、今の阪神全体のいい雰囲気が伝わってきた。
文=椎屋博幸 写真=太田裕司