
国際武道大との決勝。立大サイドの三塁応援席は、ほぼ満席となった
『大学野球2017春季リーグ戦決算号』(週刊ベースボール6月27日号増刊)は6月21日に発売されるが、この春は立大の見事な復活劇に神宮は沸いた。
21世紀初、35季ぶりに東京六大学リーグ戦を制すると、第66回全日本大学野球選手権大会では1958年以来、59年ぶりの大学日本一。巻頭カラーでは立大を総力特集していく。
国際武道大との頂上決戦。神宮のネット裏から内野、三塁応援席は、早くから多くのファンで埋まっていた。立大の59年ぶり歓喜を見届けるために集まったファン、関係者である。
1999年秋以来のリーグ制覇は、早慶戦の結果待ち(慶大が1敗でもすれば立大優勝)の状況だった。同2回戦、待機していた一塁第二ロッカールームで〝その瞬間〟を迎えた。
翌3回戦後、閉会式で立大に天皇杯が手渡され、就任4年目の溝口智成監督が神宮の杜の宙を舞ったわけであるが、やや寂しい光景だった。舞台はやはり、伝統の早慶戦であり、立大ファンは数えるほどだったからだ。
勝てば日本一――。だからこそ、大学選手権決勝への思い入れは強かった。前日の準決勝(対東海大九州キャンパス)も土曜日であったから、多くの観衆がスタンドに駆け付け、「立大劇場」はすでにヒートアップ。
決勝はさらに大盛り上がり。説明するまでもなく、神宮は東京六大学の本拠地であるが、それに輪をかけてホームアドバンテージが作用した。
スタンドに足を運ぶと、立大野球部OBも大声援。かつて取材したことがあるメンバーの顔も見られ、この日を心から待ち望んでいたのだ。
特に良かったのは7回のエール交換だ。校歌のサビの一節は心を込めて歌うのだが、三塁応援席だけではなく、内野、ネット裏の観衆まで歌っていた。貴賓席にいた
長嶋茂雄氏(
巨人終身名誉監督)までもが、口ずさんでいたという。「完全ホーム」を、ファンが作り上げたのだ。
攻撃中は応援メロディーに合わせて手拍子。59年ぶりの大学日本一は部員の「一体感」はもちろんのことだが、球場のムードも強力に後押しした。「生観戦」の醍醐味を見た、2017年の大学野球頂上決戦だった。
文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎