
ファンから絶大な支持を受ける福浦。その存在自体が低迷するロッテを救う
低迷しているチームに対して、球場で大声援を送る。かつて、Bクラス常連の
阪神戦で、外野スタンドで騒ぐのが大好きだった。最大の目的は、盛り上がる応援スタイル。つまり、シーズントータルの結果でとらえるのではなく、目の前の1試合をエンジョイする。そこで勝てば、極端な話、「優勝」と同等の喜びを味わうことができたからだ。
さて、今季のロッテは首位・
楽天と22.5ゲーム差のパ・リーグ最下位(交流戦終了時点)。交流戦で浮上のきっかけをつかみたいところだったが、借金を6個増やし(6勝12敗)、11位に終わった。
今季最多借金25。勝率5割までは、果てしなく遠い数字だ。しかし、一つずつ積み重ねていくしか方法はない。6月23日からリーグ戦が再開する。20日には
井口資仁が今季限りでの引退を表明。ベテラン自らが「全員で力を合わせて戦っていこう」と語ったように、このインタバルを巻き返しへの「切り替え」の時間にしてほしい。
こうした状況だからこそ、応援愛好家として、ZOZOマリンで何を聞きたいかと言えば、ベテラン・
福浦和也のテーマ曲だ。試合終盤、生え抜きの代打登場でボルテージが最高潮となるのは説明するまでもない。
2000安打まであと68本で迎えた24年目の今季は開幕から打撃好調。チーム不振の中、四番を任されることもあり、41歳が打線をけん引してきた。ところが、右太もも裏に張りを訴え、5月21日に出場選手登録を抹消。その後のコンディションが心配されたが、6月15日に一軍へ戻ってきた。
打つだけならば、試合に出場できたという。しかし、それは福浦の美学では許されない。野球選手として走って、守ってこそポリシー。勝負強い打撃はもとより、一塁手としてのキャッチング技術も健在で、衰えは感じない。
プロである限り、勝利を求めるのは当然だが、場合によっては「育成」にシフトチェンジすることがある。つまり、世代交代により、若手にチャンスを与えるのである。しかし、福浦に限っては、例外だ。体が動くのならば、先発で使ってほしい。ロッテファンの誰もが出番を待ち、2000安打も心から祈っている。
福浦の代打、1打席での研ぎ澄まされた集中力も見ごたえ十分。だが、常時、グラウンドに立てば、今季中の大台到達も可能だと思う。というより、個人的にはあのノリの良い応援テーマソングが、1試合1回では物足りない。
地元・習志野高から1994年ドラフト7位。福浦は12球団を通じても、最後の指名だった。投手として指名され、打者として努力で這い上がってきた“ストーリー”を知っているからこそ、ファンからの支持は絶大だ。
球場を一つにできる選手というのは、限られている。ロッテは3位・
西武とも17ゲーム差だが、CS進出をあきらめる時期ではない。
2000安打まで残り55本。背番号9は井口ともに、チーム低迷脱出への「起爆剤」として期待している。
文=岡本朋祐 写真=高塩 隆