
マンフレッドMLBコミッショナー(左)と記念撮影をするレッズから1位指名を受けたグリーン
今年のMLBのドラフトでは「二刀流」が話題になった。ルイビル大のブレンダン・マッケイは左腕で真っすぐが90~94マイル、カーブとチェンジアップを武器に今季9勝3敗、防御率2.37、91回で124三振を奪っている。野手としても一塁を守り打率.363、17本塁打、56打点。いの一番で指名権を持つツインズと下交渉をしたが、条件面で折り合えず、一巡4番目まで下がったが、指名したレイズは二刀流に挑戦させるそうだ。
もう一人はカリフォルニア州出身の高校生、ハンター・グリーン。102マイルの真っすぐを投げるが、遊撃手としても有望。未来のスターとして、スポーツ・イラストレイテッド誌が表紙で紹介した。一巡2番目に指名したレッズのディック・ウイリアムスGMは「扉は両方とも開けておく」とコメントしている。
大谷翔平(
日本ハム)の成功が、本場アメリカに飛び火したか、とても興味深い現象だ。
大谷のプロ1年目がそうだったように、アメリカでも二刀流を目指すことに疑問符がつけられている。いわく「投手と野手のルーティンは違う。両方で育てるのは難しい」「せっかく手に入れたトッププロスペクトで実験すべきではない」「ケガのリスクが高いし、うまく行ってもキャリアが短くなる」などなど。来年、大谷がメジャーに二刀流で挑戦すれば、2人ともども、この話題で盛り上がるのだろう。
マッケイをあきらめたツインズが代わりに指名したのはカリフォルニア州の高校生遊撃手ロイス・ルイス。今年は打率.377、4本塁打、25盗塁。一巡3番目はパドレスで、ノースキャロライナ州の高校生左腕マッケンジー・ゴアを指名した。ちなみにトップ3がすべて高校生というのは1990年以降初めてである。
ドラフト選手は基本的に即戦力と期待されていないが、ひょっとして、と言われているのがナショナルズの一巡25番目指名、左腕セス・
ロメロ。チームメートとケンカしたり、外出禁止令を破ったり、マリファナを服用したりの問題児で、ヒューストン大の野球部を退部させられたが、真っすぐとスライダーは一級品。実力はドラフトトップ10と評価されている。ナショナルズはナ・リーグの優勝候補だが、ブルペンが弱点。マイク・リゾGMは否定しているが、すぐメジャーに昇格させ、起用するかもしれない。
メジャーではヒジを痛めていても、トミー・ジョン手術を受ければ完治すると多くの関係者が信じている。今回も一巡9番目でブリュワーズがUCアーバイン大のケストン・ヒウラ二塁手、16番目でヤンキースがサウスキャロライナ大の右腕クラーク・シュミット、53番目でアストロズがフロリダ州のジョー・ペレズ三塁手とその可能性がある選手を指名した。
日系人のヒウラは大学No.1打者。ヒジの悪化で主にDHでプレーし、打率.442、8本塁打、50四球、38三振。選球眼がよく、確実にバットに当てる。シュミットは真っすぐとスライダー、チェンジアップが良い。ペレズは真っすぐが90マイル台後半。球団は三塁手として育成するとしているが、潜在的な二刀流候補なのである。
文=奥田秀樹 写真=Getty Images