
好投手相手の打席をバネにするのが荒木流の調整法?
今季6月3日の
楽天戦(ナゴヤドーム)で通算2000安打を達成した
中日・
荒木雅博。22年に及ぶプロ野球選手としてのキャリアから学んだ、さまざまな引き出しを隠し持っているはず。先日、その一端を明かしてもらった。
荒木が教えてくれたのは相手の主戦を務めるエース級のピッチャーとの対戦での心構え。「本当はきついんですよ。そういう相手に対して打席に立たないといけない日は。『またこのピッチャーか』というね」。
荒木が一軍での試合出場を増やした2001年であれば、
巨人・
工藤公康(現
ソフトバンク監督)や、
広島・
黒田博樹ら。しかし彼らの名前を口に出しながら、荒木は「どこのチームでもエースとの対戦は楽しかった」とも笑顔を見せる。それはなぜか。
「打ったら充実感で、その後に乗っていけることがあるんですよ。かといって打てなくても、いいピッチャーだったからと納得ができる。打てば『何だ、行けるじゃん、俺。すごいじゃん』。打てなかったら『まあ、しょうがない』。一番いい対戦相手なんです。だからそういうケースは大事にしていきたいですね」
困難が待ち構えているときこそ、それを利用できるように。言われてみればなるほど、野球選手だけではなくわれわれ一般人にも十分に応用可能なメンタル術ではないだろうか。一流選手の技をいつか試してみたいと思う。
文=吉見淳司 写真=榎本郁也