
42歳ながら6月30日現在、34試合に投げ、防御率2.39と好成績を残す岩瀬
「『有り難う』という言葉には『難』があると気が付いたんですよね」
幾多の苦難に遭いながら、
巨人のエースナンバー「18」を背負って活躍し、メジャー・リーグのマウンドにも上がった
桑田真澄はかつてこのように言っていた。やはり逆境をプラスにとらえられる姿勢があったからこそ、苦難に打ち勝つことができたのであろう。
「たとえ『難』に直面しても『有り難う』と思えるようになれば、人間として大きくなれる」(桑田)
乗り越えることが不可能に感じられる壁が目の前に立ちはだかっても、自らを成長させる糧だと感じる。難しいことかもしれないが、確かにそれができれば道が開けていくのは間違いない。ケガからの復活、不調からの再起、もう一度、NPB球団のユニフォームを着る――。野球にこだわり、あきらめない男たちは多かれ少なかれ、同様の思考回路を擁しているように思う。
6月23日の巨人戦(東京ドーム)では
中日の
岩瀬仁紀が2014年7月31日以来のセーブを挙げた。歴代最多の402セーブを挙げた球史に残るクローザー。しかし、近年は左ヒジの故障もあり、2015年は一軍登板なし、16年は15試合のみの登板に終わっていた。さらに、その2年、自らの存在価値と言えるセーブ数はゼロ。「402」からの上積みはなく今年の開幕を迎えたが、突然のセーブシチュエーションにもしっかりと仕事を果たした。
岩瀬にもきっと強い精神力があったのだろう。だからこそ、42歳にして復活を果たせた。6月30日現在、16試合連続無失点も続け、リーグ2位のホールドポイント22。通算登板数は938試合を数え、歴代最多となる
米田哲也(元阪急ほか)の949試合登板まで残り11試合に迫っている。意気軒昂な左腕の挑戦は続く。
文=小林光男 写真=川口洋邦