
ホームラン競争で優勝し、オールスターではファン投票でア・リーグ最多得票を獲得したジャッジ
7月12日の朝、編集部でメジャーのオールスター・ゲームを見ながら仕事をしていた。そこに編集部員が出社。立て続けに3人から「昨日のホームラン競争すごかったですね」と声を掛けられた。「あの選手すごい打球を打ちますね」……。あの選手? 3人とも名前が出てこない。「優勝したアーロン・ジャッジのことだよね?」と答えたが、彼らは名前が最後まで出てこなかったらしい。
昨年メジャー・デビューを果たしたとき、現地記者の樋口浩一氏にジャッジのインタビューをしてもらった。9月発売の週刊ベースボールにも2週に渡って掲載した。まあ、このときはまさか、今季すごい活躍をするとは思ってもいなかったこともあり、印象に残っていないということを考慮し、仕方ないということにしておこう。
それにしても、たった1日で日本の野球ファンにも認識されたジャッジのすごさとは何か。今回のホームラン競争では、150メートル弾を何本も放ったことで、そのパワーが規格外だったため、ということだろう。あのジャンカルロ・スタントンを凌ぐパワーの持ち主で日本人打者では考えられない、速さの打球を放つのだから、印象に残るのも不思議ではない。
しかし、彼のすごさはパワーだけではない。打撃能力がズバ抜けているのだ。今年の打率は、3割2分台。これはア・リーグ3位になり、打点もリーグ2位の66。本塁打は30本で1位と新人で三冠王を狙える存在なのだ。
さらに昨年のメジャー・デビューでは、初打席初本塁打を記録し、しかも翌試合も本塁打を放つなど、球界の盟主であるヤンキースのニュースターとして活躍中。その人気はすでに全米クラス。今回のオールスターにもア・リーグの最多得票を獲得している。打者タイプは違うが、デレク・ジーターの後継者として、今後世界的に認知されていくだろう。しかも性格も素晴らしいと聞いている。もともとヤンキースの選手たちは、非常に紳士的なだけに、そういう教育もされてきたのだろう。
今後、シーズンが進むにつれ、海の向こうから「アーロン・ジャッジ」の名前が頻繁に聞こえてくることは間違いない。
文=椎屋博幸 写真=Getty Images