
プロ5年目の今季、一軍に定着している武田健吾。課題を得ながら経験を力に変えている
明確な課題を胸に今季に挑んだ。プロ5年目を迎える武田健吾。攻守走3拍子そろった外野手として期待されながら、昨季まで一軍定着とはならず。「一軍の投手の速くて強い真っすぐを弾き返せない」と課題は理解していた。
そんな中で昨オフから意識的に取り組んできたことがある。「田口(壮・二軍)監督と話して決めました」と、指2本分バットを短く持ってコンパクトなスイングを徹底。2ストライクに追い込まれれば、さらに短く持ち変える。直球に振り負けないようにフェ
ニックス・リーグ、そしてメキシコで行われたU-23W杯で実践すると、W杯では全9試合で一番打者を務めて16安打、打率.444の活躍で大会ベストナインに選出される活躍を見せた。
「ボールをしっかりとらえられる」と感覚をつかむと、今季初スタメンとなった4月20日の
日本ハム戦(東京ドーム)でプロ初本塁打。5月17日の
ソフトバンク戦(京セラドーム)では、
サファテの151キロの直球を左翼席に運んだ。「サファテから打った1本は本当に自信になりました」と、笑顔を見せる一方で次なる課題も口にする。
「追い込まれてから簡単に三振するケースが多いので……。右方向も意識してファウルで粘らないといけないし、走者一塁で右方向にヒットを打てば、一、三塁になる可能性が広がる。逆方向を狙って進塁打を打つことをもっと意識していかないと。それに、チャンスでどれだけ打てるか。もっと打点をあげていきたい」
7月以降は
ロメロ、
マレーロの両助っ人にT-岡田、さらに
吉田正尚が腰痛から復帰して外野の層が厚くなるとベンチスタートが増えているが、学ぶことも多いという。ベンチで座る位置は本塁寄り。
福良淳一監督のそばで戦況を見つめ、自分なりに考え、理解し、そして自身の出番を待つ。
「常に投手の配球を意識して見ているんです。投手の持ち球、打者のタイプ、試合状況を考え、このカウントなら『次はスライダーかな』と」
向上心は結果に表れ、8月1日のソフトバンク戦(京セラドーム)では、代打で途中出場ながら右へ左へ2安打をマーク。ただ、3打席目となった10回裏の二死満塁のサヨナラの好機では見逃し三振に。「チャンスで打って打点を稼ぐ」の課題は残る。
「将来は三番を打ちたい。だから勝負強くなりたいんです」
8月1日時点で自身最多75試合に出場。うちスタメン37試合、途中出場38試合と、多くの経験を重ねる中で明確な目標、そのための課題を理解し、向上心は忘れない。経験を力に変える条件は十分。だからこそ、背番号56の飛躍を期待せずにはいられない。
文=鶴田成秀 写真=桜井ひとし