
野球に対し、そしてファンに対し非常に真摯な素顔を持つサントス
「昔は打ち方のことなんて考えていなかったですし、“走り打ち”もキューバ時代に足の速さを生かして出塁率を上げるためにはどうしたらいいか、ということをコーチと話し合って生まれたもの。最初は特別なこととは思っていなかった。それがまさか、ここまで有名になるなんて」
そう笑って話すのは、
ロッテに途中加入してチームの打線を活性化させている
ロエル・サントスだ。キューバ代表として出場した3月のWBCでは、打席の中で走りながら打つ“走り打ち”で話題をさらったが、日本で一軍デビューとなった5月31日の
阪神戦(ZOZOマリン)でも期待に応えるように初打席からさっそく披露。空振り三振に終わったものの、マリンのファンを沸かせた。
見る者をさらに驚かせたのが“投げ打ち”だ。6月18日の
巨人戦(東京ドーム)、延長12回の打席で追い込まれたサントスは、外に逃げるボールに対してバットを投げ出しながらスイング。手から離れたバットがボールをとらえ、鮮やかな右翼線二塁打としてしまったのだ。
「三振を避けるためについやってしまう最後の手段。それがヒットゾーンに落ちてくれたらラッキー」とこともなげに言うが、まさに神業。しかも一度のみならず、7月1日の
日本ハム戦(ZOZOマリン)でも「投げ打ち」を成功させてしまったのだから、ただの“ラッキー”ではすまされない。
野性的かつ動物的なプレーの数々。「いつもファンが喜んでくれるような“何か”をしたい」という言葉を聞くと、さらにまだ何か“秘技”を隠し持っているのではないかと期待してしまう。
それでいて語り口は穏やかで、「プレーだけでなく、スタジアムの外でも自分の人間的な部分を見てもらえたらうれしい」と話すナイスガイであることも加えておこう。まだまだその魅力は底知れない、千葉の新たなスピードスターなのである。
文=杉浦多夢 写真=井田新輔