
初勝利を挙げ笑顔の中村祐(右)と、それを喜ぶ中田(中央)
5月3日の
中日戦(マツダ
広島)で、高卒4年目の広島・
中村祐太は華々しいデビューを飾った。
プロ初登板を初先発で飾り、さらに5回3失点で初勝利をマーク。昨季の沢村賞投手であるジョンソンが開幕直後に体調不良で離脱し、先発ローテーションが不安視された中での台頭は、のちの広島の快進撃を支えた要因となった。
この試合、印象的な場面があった。それは試合中ではなく、試合後。7対4での勝利を見届けた中村祐は、グラウンドに出てファンからの祝福の声に応える。あいさつを終えベンチに引き揚げて来る際、ある選手が中村祐の肩に手を回し、まるで自分のことのように喜んでいた。
その選手は中継ぎ投手の
中田廉。中村祐より5歳年上の中田は、ともすれば中村祐よりも大きな満面の笑みを浮かべ、後輩の初白星を祝福していたのだ。
この試合で中田は、中村祐の後の二番手として登板。4対3の6回を13球で三者凡退に打ち取り、味方の追加点を呼び込んだ。
両者とも、ここ数年は故障に悩まされ、二軍で汗を流す日々が続いていた。
「これまではケガもあり、ずっと暗闇の中にいるような気持ちでした」
中村祐がそう振り返る苦しい時間。それを支えてくれた先輩の一人が、中田だった。
「同じような肩のケガだったので、僕の気持ちを分かってもらっていたのだと思います。会うたびに『大丈夫か』と声をかけてもらったり、すごく気にかけてもらっていました。本当に頼れる兄貴分という存在です」
今季、中村祐はデビュー戦から4試合で3勝をマーク。中田も欠かせない中継ぎとしてこれまで以上の活躍を見せている。
「先輩には『頑張れ』と声をかけてくれましたし、トレーナーさんやコーチも一生懸命に指導してくれました。支えてもらっている僕が下を向いていてもダメだと思えました。お世話になった人たちのために頑張ろう、という気持ちになることができました」(中村祐)
個々の選手の力だけではない。仲間同士の一体感もまた、広島の大きな力となっているのだ。
文=吉見淳司 写真=前島進