読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者はロッテ2度の日本一、WBC初代世界一に貢献した、元ロッテの里崎智也氏だ。 Q.プロ野球のサインは複雑だと聞きます。これらのサインは、どのように決められていて、何種類くらいあるものなのでしょうか。(東京都・21歳)
A.バッテリー間のサインはピッチャーの数だけある。サインミスがないようにピッチャーに決めさせる。

里崎氏は現役時代、すべて投手にサインの種類を決めさせていたという(写真=BBM)
私の場合、バッテリー間のサインということで言えば、「ピッチャーの数だけある」が答えでしょうか。共通のキーがあって、それをピッチャー陣で共有するのではなく、一人ひとりに決めさせて、それを私が覚える形を取っていました。全員異なるサインです。ですので、正確に言えば、1人のピッチャーが覚える基本的なバッテリー間(球種)のサインは1種類だけ。逆に、私は20人ピッチャーがいれば20種類ですし、30人ならば30種類でした。
もちろん、バントシフトや守備隊形、ピッチドアウトなどの内野手を含めたチーム全体で共有するサインは別にあるわけですが、バッテリー間(球種)のサインはこのような形を取っていました。なぜかというと、サイン間違いを防ぐためです。プロ野球を見ていると、サイン間違いをしてキャッチャーが慌てて捕球していたり、後ろに逸らしてしまうケースなども見受けられますが、サインミスをしているのは限りなく100パーセントに近い割合でピッチャーです。
だって、考えてもみてください。サインを出すのは、ほぼキャッチャーで、キャッチャーが「カーブ」を要求してサインを出しているのですから、それでストレートが来るほうがおかしいわけです。ごく稀に、決めていたサインが複雑過ぎて、「これがこっちだったのか」という凡ミスもないことはないですが、レアケースですね。
こういうミスがあるから、キャッチャーサイドから押し付けるサインではなく、ピッチャーに好きなように決めさせたほうが、ミスが少なくて済むわけです。キャッチャーは5本の指を駆使してサインを出すわけですが、複数回出す中の「何番目」なのか、どの指がどの球種なのか、打者によって変えるのか、奇数イニング、偶数イニングで変えるのかなどのルールもピッチャーによって全員違います。ピッチャー交代時にキャッチャーとマウンドで話している姿を見たことがあると思いますが、サインの確認も含まれています。
チームのサインは毎年変わりますが、複雑かどうかと言われると、ずっとやってきていたので何ともお答えしようがありません。間違える選手は、どんな単純なサインでも間違えますしね。
●里崎智也(さとざき・ともや) 1976年5月20日生まれ。徳島県出身。鳴門工高から帝京大を経て99年ドラフト2位でロッテ入団。06年第1回WBC代表。14年現役引退。現役生活16年の通算成績は1089試合出場、打率.256、108本塁打、458打点、6盗塁。