
プロ3年目でブレークの兆しを見せる太田。低迷するチームの希望の光となれるか
「そろそろ、二軍に落とされるんじゃ……」。そんな拭い切れない不安と日々戦いながら、プロ3年目の若武者に初めてのスポットライトが当たった瞬間だった。
8月14日の
日本ハム対
ソフトバンク戦(京セラドーム)。1対1の同点で迎えた4回一死二塁の場面で打席には、2試合連続でスタメンに抜擢された日本ハムの
太田賢吾。ガムシャラに振り抜いた打球はセンターの頭を越える勝ち越しの適時三塁打となり、三塁ベース上で
白井一幸コーチと喜びを爆発させた。
タイムリーを打った相手は奇しくも
松本裕樹。名前だけでピンときた方も多いかと思うが、2015年ドラフトでともにプロの門をたたいた同学年のドライチ右腕であり、下位指名(8位)からのたたき上げで一軍キップをつかんだ太田にとっては、いろんな意味で忘れられない一打になったに違いない。
そんな太田賢吾とはどういった選手なのか。
埼玉・川越工高時代も全国的には無名で、甲子園出場経験もない。それでも公立高校ながら最後の夏の県大会では打率5割を超えるなど、ドラフトの隠し玉候補として知る人ぞ知る存在であった。
プロ入り後もファームで高卒1年目から93試合、2年目も83試合に出場を果たして着実に成長。迎えた今シーズンは春季キャンプも初の一軍スタート。前半戦は二軍調整が続いたが、7月18日に一軍に呼ばれると、貴重な内野のバックアップまたは左の代打として存在感を高めている。
身長186センチ、体重81キロ。近年のチームにはいなかった大型内野手として期待がかかる背番号65。本人の目標は「シーズンの最後まで一軍にいること」と控えめだが、アグレッシブかつ華のあるプレーは魅力十分。新天地で躍動する
大田泰示だけでなく、日本ハムにいるもう1人の『太田』にも、ぜひ注目していってもらいたい。
文=松井進作 写真=毛受亮介