
上位進出こそならなかったが、攻守走で力を発揮した山田
甲子園の観衆を驚かせる巧みな「トリックプレー」を見せたのは2回戦、天理高(奈良)戦だった。5回裏、連続二塁打と犠飛で追加点を奪った履正社は、なおも二死一、三塁の好機を作っていた。ここで一走出口がスタートを切り、途中でつまずく「演技」。一、二塁間に挟まれると、今度は三走の
山田哲人がわずかなスキを見逃さずにスタート。見事にホームスチールを成功させたのだった。4対1で天理高を下し、履正社高としては甲子園での夏初勝利となった。
聖光学院高(福島)との3回戦では、今度はバットで力を発揮する。0対2と劣勢に立たされていた6回、一死一塁で打席に入ると、好投手・
歳内宏明(現
阪神)から左翼席へ同点2ラン。8回裏に勝ち越され、履正社高は惜しくも敗れたが、山田は遊撃のポジションでも躍動感あるプレーを披露。「楽しんでプレーできた。幸せです」と納得顔だった。
同校の先輩である
オリックス・T-岡田と常に比較されるほど、当時から優れた打撃技術を誇っていた。敗退後にこの夏の成長は? と問われると「チャンスで打てるようになったことです」。T-山田という呼び名が定着しなかったのは、自身の強烈な個性があったからだ。
山田は卒業後、
ヤクルトかとオリックスから外れ1位で指名を受け、抽選の結果、ヤクルトへ。みるみるうちに頭角を現すと、2015年から2年連続でトリプルスリーを達成。「背番号1」を背負い、ミスタースワローズへの道を力強く歩んでいる。
写真=BBM