読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は捕手編。回答者はロッテ2度の日本一、WBC初代世界一に貢献した、元ロッテの里崎智也氏だ。 Q.「ストライクゾーンを広く使う」という言葉をテレビ中継などの解説で耳にします。配球のことだと思いますが、具体的にはどういうことなのでしょうか。(東京都・34歳)
A.内外角などのコースの幅を持たせた攻めのこと。コーナーギリギリの攻防は四球のリスクもある。
イラスト=横山英史
まず、大前提として野球規則では、ストライクゾーンを「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、膝頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。 このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」と定められています。これはストライクゾーンの上下を定めたもので、左右は当然ながらホームベースの幅ということになります。この上下左右のゾーンを投球が通過もしくは少しでもかすめさえすれば、ストライクというのが原理原則です。
「ストライクゾーンを広く使う」という言葉はプロの世界でも解説などを聞くとよく使われていますが、基本的に、ストライクゾーンは“変わらない”(※体のサイズや構えによって、上限&下限は一人ひとり変化するが、バッテリー側から変えることはできない)わけですから、“拡げる”という意味ではとらないでください。この部分で誤解している方は結構多いように思います。解説者が使う言葉は言葉足らずで誤解を招く表現が多いですね。
この解説者の言いたかったであろう本来の意味は、甘いコースに投げるのではなく、内外角上下コーナーギリギリを投げ分けるという意味で、私が言うとしたら「四球になってもいいので、内角と外角とコースの幅を持たせた攻めをしたいですね。ただし、甘めのボールは禁物です」とします。私がキャッチャーで出ていて、「サト、ストライクゾーンを広く使えよ」とベンチから指示が出たら、「ナニ言っとんねん」と思いますね。
ちなみに、コースの幅を持たせた配球はバッターにコースを意識させることでストライクゾーンそのものの範囲は変わらないのに、広く感じさせることは可能です。よく言われるのが“内角高め&外角低め”のセットですね。特に内角高めに力のある真っすぐを投げ込んだ後、外角低めにスライダーなどの変化球は、アマチュアレベルでは効果的かと思います。ただ、プロのレベルではその攻めは頭に入っている。コーナーギリギリいっぱいの攻防になりますが、四球のリスクも付きまといます。
●里崎智也(さとざき・ともや) 1976年5月20日生まれ。徳島県出身。鳴門工高から帝京大を経て99年ドラフト2位でロッテ入団。06年第1回WBC代表。14年現役引退。現役生活16年の通算成績は1089試合出場、打率.256、108本塁打、458打点、6盗塁。