現地時間9月1日から始まる「第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」。清宮幸太郎を主将とした“高校生ジャパン”がカナダで世界を相手に奮闘を繰り広げる。悲願の世界一へ――。若きサムライたちの戦いを追う。 「もっともっと勉強できると思った」

2回表一死三塁から先発・川端は先制2ランを浴びた。後方には捕手・中村
因縁の「日米対決」である。9月2日(日本時間3日)に行われたアメリカ対日本。アメリカは前回、前々回大会と決勝で敗れた相手であり、主将・清宮幸太郎(早実)は前日のメキシコ戦後「予選で勝っておけば、イヤな印象を与えられる。意味のある試合にしたい」と意気込んでいた。
1回表、アメリカの攻撃。先頭打者に安打を許すも、二番打者の空振り三振と、一塁走者の二盗を阻止した。そこで光ったのが、捕手・
中村奨成(広陵)の強肩である。スカウトのストップウォッチは「1.96秒」を計測した。
前日のオランダ戦で5盗塁をマークしていたアメリカに対し、「昨日の夜からアメリカは足があると言われていたので、準備はしっかりできていた」と中村。まさしく矢のような送球で、試合の流れを日本へ引き寄せた。
今夏の甲子園ではPL学園・
清原和博の持つ個人大会本塁打記録(5)を6本に更新。惜しくも全国制覇を逃したものの中村は甲子園に多くのインパクトを残した。「中村伝説」はカナダでも続いているのだと確信したスーパープレー。しかし、現実は甘くなかった。
2回表無死二塁で、二塁けん制が悪送球となり三進を許す。一死後、簡単に2ストライクに追い込んでからの3球目のストレートが甘く入り、先制2ランを被弾した。
「ボールでも良かったんですけど、自分の投手への表現が甘かった。ボールか三振を取れたらいいや、と。高めで釣って、最後は変化球勝負と考えていたんですけど……。ウエストしようと思った? はい」
5回表は一死二塁から空振り三振を奪ったストレートを「やったことはありません」と言うまさかの捕球ミス。一塁転送の間に二塁走者の生還を許してしまった。
「焦りだったりで、取り損ねが出たのかな、と。照明が暗い? そういうのを言うと言い訳になるので言いたくない。自分の技術ミスです」
試合は0対4で、打線も2安打の完敗だった。中村は6回に交代を告げられた。しかし、決して下は向かない。このコメントを聞き、絶対に取り返してくれると確信した。
「もっともっと勉強できると思った。監督さんも直接は言われなかったですけど、そういうふうに言ってくださったのかなと思う。最初はかぶって、後はベンチで、外から見ろという意図があったのかな、と」
中村は今回、初の国際試合であり、海外での生活も初めて。飛行機も東京から
広島がこれまでの最長であり、長いフライトすら経験がなかったという。6試合を戦った甲子園の蓄積疲労、時差ボケ……。心身ともにつらい状況のはずだが、プロ野球を目指す中村にとって、すべてが今後の糧になる。
学習能力の高さこそ、一流選手の証明。中村はアメリカ戦を「意味のある試合」と受け止め、雪辱へ向けた肥やしとする。
<次回に続く>
文=岡本朋祐 写真=早浪章弘