読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打者編。回答者は巨人でシュアなスラッガーとして強打を発揮した、元巨人の吉村禎章氏だ。 Q.プロ野球の春のキャンプを見学に行きました。全体練習終了後、数人の選手がフリーバッティングを行うのではなく、グラウンド内に向かってティーバッティングを行っていました。何本かサク越えをしている選手もいましたが、この練習にはどんな意味があるのでしょうか。(神奈川県・22歳)
A.大きく体を連動させて使う動作を確認。スイングも適度な大きさを取り戻すことができる。

イラスト=横山英史
これはいわゆる“ロングティー”と言われるバッティング練習のメニューで、私も現役時代に取り入れていました。例えば、フリーバッティングや、(集球)ネットに向かって打つティーバッティングなどは“ボールを打つ”、つまり“芯に確実に当てて弾き返す”という意識が強く働くものです。
一方で、ロングティーは文字どおり、遠くへ飛ばす(ロング)ことが目的のメニューで、パートナーに上げてもらったトスを打ち返していきますから、反発力がないのでただ芯を食わせるだけでは飛距離が伸びません。もちろん、芯でとらえることは大前提ではありますが、これに加えて自分の体全体を大きく使い、大きくスイングしていくことが求められます。
その中でバットの芯を食わせていくわけですが、自分の体を目いっぱい大きく使ってスイングをしようとすると、今度は大きく連動することが必要になっていきます。例えば、下半身から動いて、徐々に上半身が動いていき、最後にバットが出てきてインパクトを迎える。この一連のゆったりと大きく体を連動させて使う動作を確認するために、プロの選手たちはロングティーを行っています。
というのも、ネットを使ったティーバッティングや、フリーバッティングを繰り返していると、どうしてもボールを芯でとらえることに集中してしまい、スイングが小さくなっていきがちです。それでは確実性はあっても、強く、飛距離のある打球にはつながっていきません。そこで、ロングティーです。
体を大きく動かすことを確認できますし、スイングも適度な大きさを取り戻すことができます(もちろん限度はあって、実戦で使えないほどの大振りとは異なります)。また、ロングティーを繰り返すことで、ボールをバットに乗せて運ぶ感覚も身につけられますし、繰り返すことで体とバットが一体化していることも体感することができるでしょう。
質問の方は春季キャンプでこの練習をご覧になったようですが、シーズン中でもスイングが窮屈になったなと思えば、選手たちはゲージの隣でロングティーをしていますので、見てみてください。
●吉村禎章(よしむら・さだあき) 1963年4月27日生まれ。奈良県出身。PL学園高から82年ドラフト3位で巨人入団。98年現役引退。2002~03、06~11年は巨人コーチ。現役生活17年の通算成績は1349試合出場、打率.296、149本塁打、535打点、40盗塁。